映画『国際市場』(ユン・ジェギュン監督)がヒットしている。その立役者は、どう見ても波瀾(はらん)万丈の現代史を全力で生きた父「ドクス」を演じたファン・ジョンミン(44)だろう。公開直前に会ったファン・ジョンミンは「ドクスは私の父親、観客の皆さんの父親、あるいは私たちみんなの父親かもしれない。近所によくいる平凡な父親として描きたかった。実際に『おやじ、この程度なら幸せな人生だろ? でも、本当はつらかったんだよ』というドクスのセリフは20歳でも70歳でも、男なら誰もが感じる感情のはずだ。よくありがちなそういうセリフが説得力を持つように、俳優ファン・ジョンミンが演じている役だということを観客が忘れるよう、平凡な父親に見せようと思った」と語った。
ドクスは興南撤収(6・25戦争〈朝鮮戦争〉時の1950年12月、難民約10万人が北朝鮮から韓国に海路で避難した作戦)、西ドイツ炭鉱出稼ぎ労働、ベトナム戦争を経験した後、子どもたちに「随分前から言うことを聞かなくなった」と不満を言われるような頑固な年寄りになり、釜山市場にたむろしている。ファン・ジョンミン演じる父親は生まれも育ちも馬山だ。「完全に『怖い人』。自分が小さかったころの父を考えると『水持って来い』という一言しか覚えていない。食べるのがとても早くて、『飯だ』と言われて行くと、父はもう食べ終わっている(笑)。映画を撮って、やりたいことをして生きてきた私の人生にあらためて感謝した。初めて芝居をすると言ったとき、母は泣いて反対したが、父は何も言わなかった。そういう姿が、私たちが思う父親の姿だったと思う」
ファン・ジョンミンは映画『国際市場』の持つパワーについて「韓国人なら誰もが知っている歴史、私たちのDNA、細胞、無意識の中に刻まれた物語からわいてくるのだと思う。70代になったドクスが映画の結論だが、これをどう20-30代の若いころの姿につなげ、一貫させるかで悩んだ。人生の最前線である市場の通りで人生に耐えてきたお年寄りの打たれ強さ、一本気な感じはそうした経験の蓄積だろうから」