老夫婦の愛描いた映画に100万人が感動

『あなた、あの川を渡らないで』、ドキュメンタリー映画に旋風

老夫婦の愛描いた映画に100万人が感動

 これほどなら「大ヒット」だ。

 12月12日に興行成績ランキングで1位となったドキュメンタリー映画『あなた、あの川を渡らないで』(チン・モヨン監督)が、14日には公開から18日目にして観客100万人を突破した。

 同作は先日も土曜日(1万1856人)より日曜日(1万2938人)の方が観客数が多いという珍しい傾向を見せた。上映館数、チケット前売り率など、ドキュメンタリー映画の各種記録を更新しているだけでなく、ポータルサイトや劇場の前売りサイトでも観客による評点で1位を総なめにしている。『牛の鈴音』や『Begin Again』のように小規模で公開されてから口コミで広がり、興行ランキングを下から上へと逆走する、典型的な「アートバスター(興行的に成功したインディペンデント芸術映画)」パターンだ。

 専門家らはまず、この作品が持つ「映画的な力」が若い観客を取り込んでいると見ている。映画評論家のシム・ヨンソプは「愛自体の偉大さを切々と表現するドキュメンタリーの力がある。韓国映画の名ゼリフでもある『どうして愛が変わるの?』(『春の日は過ぎ行く』より)という質問に対し『永遠の愛もある』と答えたもの」と話した。「『建築学概論』のような初恋は多くの人が体験するが、この映画はその正反対で、誰にでも与えられるわけではない祝福であり挑戦でもある『最後の愛』、まさに『宗教的』な真の愛について語っている」というわけだ。

 映画を演出したチン・モヨン監督も「若い観客は老夫婦の愛を童話的なファンタジーとして受け入れているようだ」と話した。同作は前売りチケットを購入した年齢層のうち、20代(53.4%)の比率が最も高く(CGV)、ポータルサイトの性別・年齢別でも20代女性が最も好きな映画と分析されている。

 『鳴梁』以来、劇場の新たな主力客層に浮上した中高年からの人気も高い。配給会社CGVアートハウスの関係者は「同窓会など年末の集まりの後、団体観覧をした後で監督と語り合うことはできるのか、という問い合わせが相次いでいる。監督の体が10個あっても足りないくらい」と話した。映画評論家のキム・ヒョンソクは、この映画を見る中高年層の感情を「高齢化社会の中『孤独死』に対する恐れを拭い去りたい欲求」と指摘した。「恋愛も結婚も大変だが、結婚後、幸せに暮らすことがさらに大変な時代。特に調味料のない淡々としたドキュメンタリーの力が、『自分もあんな風に生きることができるだろうか』と問い掛けると同時に、感動を呼び起こしている」と分析される。

 洗練された映像も、ヒット要因の一つとして挙げられる。映画評論家のオ・ドンジンは「カメラが軒下に落ちる雨のしずくや森を吹き抜ける風のような素朴な自然を安定的にとらえている。『デパートで買うドキュメンタリー』のような、新鮮な魅力がある」と話した。「おじいさんが亡くなるので悲しいエンディングのように感じられるが、実は永遠の愛につながるハッピーエンド。誰にでも勧めることができ、誰が見ても満足度の高い、家族や愛などを描く『年末年始向き』の映画」(映画会社ジンジンのキム・ナンスク代表)という分析もある。

 同作は、テレビのドキュメンタリーでも紹介されたことのある、カン・ゲヨルさん(89)と9歳年上の夫チョ・ビョンマンさんの物語。江原道横城の山里を背景に、76年にわたり恋人のように過ごした「アツアツカップル」の仲睦まじい姿から突然の別れまでを描いた。

イ・テフン記者
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