「一番いい芝居ができるまで自分を追い込む。撮影現場の先輩たちが僕にとっては師匠」
きょうも泥酔した。上司のブリーフケースを「X字」に肩掛けし、接待客を抱き抱えてホテルの前まで来た。「(契約)よろしくお願いします!」。ホテルの部屋のキーを渡し、課長が先方に腰を100度以上曲げる。相手が去っても腰は曲がったままだ。彼は課長の背中をしばらく見詰めている。ほどなくして、彼は課長に深々とお辞儀をする。「お疲れさまでした」
ソウル市鍾路区寿松洞の撮影現場近くで10月29日、金土ドラマ『未生』(tvN)でチャン・グレ役を演じるZE:Aのシワンに会った。「本当に職場に通っている気分」と話すシワン。就職経験はない。釜山大学機械工学部1年生だったとき、整備業を営んでいた父親の下で、夏休みに機械の修理を手伝ったのが、職場生活(?)の全てだ。会社員を演じるため、会社に勤める友人に何度か電話をかけた。「職場の上司の悪口から、生きていくのは容易ではないという話まで、いろいろ聞いた。演技のアドバイスというより、友人たちの生活のことを聞いた。会社員なら感じるであろう普遍的な感性を読み取りたかった」というシワン。「人の裏の姿を見ることができる俳優」と原作漫画家ユン・テホが絶賛するように、シワンの熱演によってドラマは毎回好視聴率を記録している。
囲碁のプロ棋士になりたかったチャン・グレのように、シワンも小学生のとき、囲碁を習ったことがある。「今は碁盤もあまり見ないし、打ち方も忘れた」と言って笑うシワン。今、シワンの棋譜は台本だ。シワンは「自分をとことん追い込むスタイル」と話した。「アドリブ演技よりは台本を何度も読んで、しばらく考えるタイプ。具現できる一番いいシーンを考えようとするので、かなりストレスがたまる」
撮影前も、シワンはしばらく所定の位置でグルグル回っていた。泥酔した演技をするためだった。俳優生活3年目だが、特に演技の授業を受けたことはない。シワンは「撮影現場の先輩方全てが師匠」と話した。映画『弁護人』ではソン・ガンホ、今回はイ・ソンミン(オ・サンシク課長役)だ。無料課外授業のおかげで、シワンは非常に成長した。この日もシワンは、イ・ソンミンについて「毎シーン、学ぶことばかり。運がいい」と語った。本当にその通りだ。視聴率40%を超えたデビュー作『太陽を抱く月』(MBC)から、昨年観客数1100万人以上を動員した映画デビュー作『弁護人』まで、出演作が相次いでヒット。シワンは「そもそも出演作があまり多くない」と言ってはにかみながらも「運がいいと言えばいいのだと思う」と答えた。
原作の同名ウェブ漫画を全て見たというシワンが、一番好きな言葉として、第2話に出てきた「チャンスにも資格がいる」というセリフを挙げた。シワンは「チャン・グレは昔の自分と重なる部分が多い」と振り返った。2010年、アイドルグループZE:Aのメンバーとして芸能界デビューを果たしたが、爆発的な勢いはなかった。「デビューしてから、もっと不安で怖くなった。デビューさえすればこっちのものだと思っていたのに、試練の始まりだった。全てに不慣れだった以前の自分を思い出しながら、シワンはドラマの序盤、自分の体格より2サイズ大きなスーツを着た。ウエスト27インチ(69センチ)、体重57キロの体で105(XL)サイズ。「3着のうち1着を自分で選んだ。父が着ていたものと似たものを」。体より大きな服を着て、チャン・グレは社会という巨大な川と初めて向き合う。
本名はイム・ウンジェ。芸名シワンは、自分が好きなスワン(白鳥)から取った。醜いアヒルが白鳥になるように、インターンのチャン・グレは契約社員になった。午後9時30分、撮影が終わったとたん、シワンはアルバムのレコーディングのため直ちにスタジオへ向かった。さらに前進し続けるため、歩みを止めず、また一歩踏み出した。