「石」と「風」そして「女性」…済州を代表する三つのイメージだ。だが最近、旅行客の間では、国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産に登録された自然景観とおいしい食べ物が新たな済州島のイメージとして定着している。
中でも済州島グルメを代表する黒豚は、旅行客の間でも絶対に外せないものとして、人気が日に日に高まっている。済州の「名品」に選ばれるだけあり、ずば抜けた肉質と味を誇る黒豚。早速、済州の黒豚料理を紹介してみよう。
■黒豚の魅力にどっぷりはまる「黒豚通り」
済州には至る所に黒豚専門店がある。どこで食べようかと悩んでいるのなら、空港からさほど遠くない黒豚通りに行ってみよう。路地にずらりと並ぶ専門店が、済州島の方言で「いらっしゃいませ」と迎えてくれるだろう。
入り口に立った瞬間、肉を焼く香ばしいにおいが鼻をくすぐる。あちこちの店から立ち上る煙にも刺激されてよだれが出そうだ。およそ30年前、近くを流れる川の周辺の焼き肉店が徐々にこの地に集まり、黒豚通りが形成されたという。今では10店以上の黒豚専門店が軒を連ねている。
済州島の黒豚専門店では、さまざまな種類の新鮮な黒豚料理を味わえるのが最大の特徴だ。テッペサムギョプサル(薄くスライスした豚肉をたれでさっと焼いた料理)のような一部のメニューを除いては、全て当日に処理された新鮮な豚肉を使っている。
黒豚の肉は弾力があり、普通の豚肉よりも焼くのに時間がかかる。そのため、自分でうまく焼く自信がなければ店員に焼いてもらうことをお勧めする。
黒豚をおいしく食べる方法は簡単。適当な厚さに切った肉を鉄板の上に乗せて、じっくり焼くだけだ。このとき鉄板から漂う黒豚特有の香りをかぐと、口の中に唾が広がってくるが、焼けるのに時間がかかるのでもう少し辛抱強く待ち続けよう。
焼き上がった肉は、炭火で熱したイワシの塩辛につけて食べる。このとき、塩辛に入っているトウガラシとニンニクも一緒に食べるとパリッとした野菜の歯ざわりと肉の弾力を同時に味わえる。海と陸の幻想的なハーモニーとでも言おうか。済州の名品に選ばれた理由がよく分かるだろう。
■豚焼き肉の絶対王者、黒豚の串焼き
今度は、団体客や特別な味を求める人に最適な料理を紹介しよう。豚肉の巨大串焼きだ。一般的に串焼きといえば、手のひらほどのサイズを想像するだろう。だが済州島の串焼きはスケールが全く違う。
小学生の背丈ぐらいある串がドーンとテーブルに運ばれてくると、注文した人だけでなく周りのテーブルの人々からも「うわぁ」と驚きの声が上がる。肉を焼く前の記念撮影は必須なので、あらかじめカメラを準備しておこう。
この巨大串焼きを食べるには予約が必要だ。黒豚のおいしい部位だけを選び抜き、各種野菜と一緒に串刺しにするもので、一言でいえば芸術だ。「見た目のよい餅は食べてもおいしい(見かけのよいものは内容もよいという意味)」とはよく言ったものだ。串から一つずつ外して食べる肉は、味も一級品だ。
たっぷりの肉でおなかがいっぱいになっても、必ず一緒に食べたい料理がある。豚の前足の骨とあばら骨の間の部位を煮込んだ豚骨スープ「チョプチャクピョグク」だ。こってりして白みがかったスープが魅力的な上、ここでしか食べられない特別なものなので、必ず味わってみてほしい。
■口の中でトロリと溶ける黒豚しゃぶしゃぶ
最後に紹介する豚料理は「しゃぶしゃぶ」。一般的に知られているしゃぶしゃぶは、沸騰したお湯に薄くスライスした牛肉をさっと通して食べる。だが済州島では豚肉のしゃぶしゃぶが味わえる。
食べ方は普通のしゃぶしゃぶと同じだ。薄くスライスした豚肉を野菜や魚介類の入ったスープにくぐらせて食べる。肉はヒレやバラ肉など柔らかい部分を使う。はた目には牛肉のしゃぶしゃぶとほぼ同じだ。だが豚肉は硬いため、牛肉より少し長く火を通した方がよい。
最近では都心のあちこちで、済州島の黒豚専門という看板を掲げた飲食店が見られる。だが、都会と済州の双方で黒豚を食べた人は、皆同じように「黒豚を本当に味わうならやはり済州島じゃないと」と感じるだろう。