「思ったより大変だと思いますよ。大丈夫ですか?」
8月24日、YGエンターテインメントの5人組男性アイドルグループ「WINNER」に丸一日同行するに当たり、マネージャーからこう言われた。デビューからわずか1週間だが、デビューアルバムのリード曲「empty」は各音源チャートやテレビ局の音楽ランキング番組で1位を席巻。来月には日本で5都市を回るコンサートツアーを行う。WINNERがデビュー直後から爆発的な人気を集めているのは、所属事務所であるYGの全面的なバックアップに加え、メンバーのカン・スンユンやイ・スンフンらがオーディション番組に出演しすでにスターダムにのし上がっているからだ。一言で言えば売れっ子アイドルだが、芸能界で「売れっ子」というのは「忙しい」という意味になる。この日のWINNERのスケジュールは2件だけだったが、休む暇は全くなかった。
■午前10時-午後0時40分:テレビ出演前の準備
「こんにちは」。午前10時、ソウル市麻浦区合井洞にあるYG専用のメークルームに入ったWINNERのメンバーたちは、腰を90度に折ってコーディネーターらスタッフ陣にあいさつした。だが声には力がなかった。デビュー以来、睡眠時間は平均3-4時間。20代前半の若者たちは、椅子に座ったまま何度もうとうとした。
メンバーが支度をする間にマネージャーが昼食を買ってきた。朝食も兼ねたブランチで、メニューはメンバーの好きな、近所の食堂のコチュジャンプルコギ(豚肉の辛味炒め)。メンバーは昼食を取りながら、自分のメークの番が来ると椅子に戻って時折うとうとしながらメークをしてもらっていた。WINNERはデビュー以来、1度も歌やダンスの練習ができていない。イ・スンフンは「スケジュールが詰まっていて日本のコンサートツアーの練習もあまりできず、心配だ」と語った。
■午後1時10分-8時10分:テレビの音楽番組に出演
SBSテレビの音楽番組『人気歌謡』の放送が行われるソウル市内のSBS公開ホールは、すでに正午過ぎには十数組のアイドルグループでいっぱいだった。アイドルの楽屋は通常、デビューの古い順に割り当てられる。生放送の場合、ステージに最も近い楽屋は出演者の中で最もベテランとなるアイドルが使う。WINNERは新人アイドル「防弾少年団」らと一緒に、ステージから最も遠い4階の隅の楽屋を使った。
WINNERをはじめ新人アイドルたちは、すれ違う全ての人に「こんにちは」「お疲れさまでした」と大きな声であいさつした。カン・スンユンは「テレビ局では1日に200回ぐらいあいさつしていると思う」と話した。あるテレビ局のスタッフは「アイドルが最も多くやることは歌ではなくあいさつ」と冗談交じりに話した。KARAやSecretのような「中堅アイドル」になると、あいさつ代わりに黙って頭を下げる程度だった。
WINNERはこの日、トップアイドルたちを制してランキング1位を獲得。『人気歌謡』は生放送だが、WINNERは事前に収録した映像を番組で流した。YGのイ・ビョンヨン・マネージャーは「まだ生放送で歌うには不安があるため、事前に収録した」と説明した。WINNERは生放送終了後、売店で買ってきたパック入りご飯とツナ缶で夕食を済ませ、ようやくステージに立った。午後7時30分から30分間、次週のための収録を行ったのだ。WINNERがこの日歌ったのは、これが最初で最後だった。
■午後8時20分-9時:サイン会
金浦空港の隣にあるロッテモールの広場は雨が降っていた。サイン会は午後8時からの予定だったが、遅れそうだったため、マネージャーは神業に近い運転技術でSBS公開ホールから金浦空港まで10分でたどり着いた。
サイン会に招待されたファンはわずか110人。3万5000ウォン(約3500円)の限定盤CDに同封されている応募券を使って申し込み、当選したファンだけが招待されるのだ。「CDを50枚買ったが当選しなかった」とインターネットの掲示板に抗議の書き込みを寄せるファンもいた。当選しなかったファンたちは、イベント会場の周囲に張られた入場規制線の外でメンバーたちの名前を叫び続けた。場外のファンたちが乱入しないよう警戒するのもマネージャーたちの任務だった。イベントは40分で終了。イベントに参加した16歳の女性は「ほかのアイドルのサイン会は1時間30分もやっているのに、WINNERはどうして40分しかやらないの」と叫んだ。
午後10時ごろ、WINNERは再び合井洞のメークルームに戻った。翌日の衣装を選ぶためだ。あれこれと衣装に袖を通しているうちに午前0時をとっくに過ぎてしまった。午前2時ごろ、WINNERはスタッフたちに再び腰を90度に折ってあいさつした。「きょうもお疲れさまでした」。翌25日、WINNERは朝8時からスケジュールが入っていた。