刃物から刃物へ。イ・ミンギは今年、刃物を手から離していない。3月に公開された映画『モンスター』では連続殺人犯として、現在上映中の映画『皇帝のために』では元野球選手のヤミ金業者として刃物を振り回している。キュートに(映画『TSUNAMI-ツナミ-』)、時には激しく共感できるように(映画『恋愛の温度』)観客を魅了したイ・ミンギが、青光りする刃のように冷たいまなざしでスクリーンをにらんでいる。なぜこのように強いキャラクターでイメージチェンジを図ったのかが気になるが、イ・ミンギは「男なら強くてこそ、真の男ではないか」とし、これまで感じてきた演技に対する思いについて語った。
「正統派ノワールに対する渇望は、俳優なら誰でも持っている。公開時期が重なり、イメージが強く固まりはしたが、『モンスター』も『皇帝のために』も僕が本当にやりたかった演技。特に『皇帝のために』では表現方法がストレートな『直説法』を追求した。ノワール中のノワールだった」
ただし、『皇帝のために』に対するイ・ミンギの愛着ほど、世間の視線は優しくなかった。同作は組織暴力団の世界を舞台にした映画で、『新しき世界』で人気を博した俳優パク・ソンウンの出演作ということで、「亜流作」という印象もあった。予告編、ポスターなどから漂う「男たちの物語」という強烈なメッセージに、映画『アジョシ』を思い浮かべるファンもいた。
「僕たちは『新しき世界』にも『アジョシ』にもなりたくなかった。『新しき世界』とはキャラクターの感じが全く違うし、『アジョシ』のようなアクションでもない。自分たちの持ち味をありのままに生かし、あえて話を作らなかった。僕とイ・テイムさん、僕とパク・ソンウンさんの関係で、蓋然性のためのエピソードはほとんどない。もともとシナリオにはあったが、『何のために』という部分を最大限省こうと。表現方法が全く違う映画」