【ソウル聯合ニュース】韓流スターであり、韓国を代表するイケメン俳優の一人、ソン・スンホンも30代後半に差しかかった。デビュー後約20年にわたりドラマや映画に出演し、人生の半分以上を俳優として生きてきた。
目鼻立ちの整った顔を武器にこれまでスターとして注目を受けてきた。韓国だけでなく日本、中国、東南アジアなどでの人気は衰えない。人気の秘訣(ひけつ)の一つは端正なイメージ、マナーの良さ、人柄の良さが表れるほほ笑みにある。
ソン・スンホンは14日、主演映画「人間中毒」(原題)の韓国公開に合わせ、ソウル市内でインタビューに応じた。「人間中毒」は「恋の罠」(2006年)や「春香秘伝 The Servant 房子伝」(2010年)などを手掛けたキム・デウ監督の最新作。韓国では満19歳未満は観賞できない「青少年観覧不可」に指定されている。
ソン・スンホンが「青少年観覧不可」の作品に出演したのは初めて。これまでのイメージが崩れかねない危険な選択だった。なぜそのような選択をしたのかと尋ねると「スターのイメージから抜け出したかった」との答えが返ってきた。
常に良いイメージ、正しく、格好良く、道徳的な姿。その枠にとどまっても差し支えはなく、これまで実際にそうだった。人々から歓声を受ける姿だけを見せたいと思っていた時期もあったが、最近は「真の俳優になりたい」と思うようになった。
これまで先輩らから「これからは俳優にならないとね」とアドバイスされることがあったが、それがどういう意味なのか理解できなかった。「自分は演技しているのになぜ?」という疑問ばかりが残ったが、最近になってようやく「立派な俳優になりたい」という思いが芽生えた。「幸いいろんな人がイメージチェンジを認めてくれているようでさらに自信がつきました。もっとインパクトのあるキャラクターに挑戦し、いろいろと試してみたいです」
「人間中毒」では主人公のキム・ジンピョンを演じた。ジンピョンは36歳の若さで将軍昇進を目前に控えたエリート軍人でありながらベトナム戦争での過酷な経験から精神的な傷を持つ人物。夫の出世に目がくらんだ妻や自分の顔色ばかりをうかがう部下に囲まれ退屈な日々を送っていたジンピョンはある日、部下の妻で華僑のチョン・ガフンと不倫の恋に落ちる。
劇中では濃厚なベッドシーンもあり、ソン・スンホンが以前のイメージとかけ離れたジンピョンを演じるという話が出回ったとき、映画界からはやや意外だという反応もみられた。
出演を決心した理由について、「負担がなかったと言えばうそになりますが、不倫をするという設定やベッドシーンはさておき、シナリオが良かった。この作品に出なければ後悔しそうだったので」と振り返った。キム監督に対する信頼が大きかったことも出演の決め手となった。
同作には3回ほど濃厚なベッドシーンが登場する。下手をすればジンピョンとガフンが互いの肉体を求め合うシーンで終わってしまう可能性もあり、細心の注意を払って撮影に臨んだ。互いに愛するという感情を越え、切なさが伝わるよう努力した。
ベッドシーンについては「予想以上に大変で驚きました」と振り返る。アクションシーンでもないのに監督の「カット」という言葉が聞こえないほど息切れした。撮影前は高をくくっていたが、ベッドシーンは決して簡単ではないことを痛感したという。
スターとしてイメージを着実に築き上げてきたソン・スンホンは一時、手掛けてみたいビジネスのことで頭がいっぱいになり、演技だけに集中することができない時期があった。芸能界入りは突然のことだったため、本当に自分が望んでいることが何なのか分からなかったために訪れた葛藤の時期だった。
「いつまで俳優を続けるべきかという悩みがあったのだと思います。レストランも経営してみたいと思っていましたし。でも、そういう考えを持っていること自体が俳優としての自信がないことを意味しているのではないかという思いがよぎり、最近ようやく演技に全てをかけようと決心しました」
これからは成功した事業家ではなく「俳優らしい」という評価を受けたいという。どこにいても俳優として堂々と胸を張れるよう、演技で認められることが人生最大の目標となった。
決心がついたことで視野も広がった。出演作の興行成績に一喜一憂しないと決めた。年を取っても俳優を続けるのであれば何事も長い目で見ようという姿勢を心掛けるようになってから余裕も生まれた。
「人間中毒」の撮影が始まってから、以前は来ることのなかった悪役のオファーを受けるなど変化が起きたという。ソン・スンホンも「自分の選択は正しかったと思うと気分が良くなり、変わりたいという思いを分かってもらえてうれしかったです」と、新たな変化を喜んだ。
次の出演作については、恋愛映画または政治・アクション映画への出演を検討しているそうだ。今度はどんな変身ぶりを見せるのか期待が高まる。