日本で初『ジャック・ザ・リッパー』シアタービューイング

450型の大画面でド迫力ミュージカル

日本で初『ジャック・ザ・リッパー』シアタービューイング

 公演開始10分前、2400席の大劇場に観客が次々と入場してきた。ロビーでは出演者の顔が入った菓子やプログラムを買い求める行列ができていた。一見、普通のミュージカル公演会場と全く同じに見える。だが、上演開始時間になってもステージ上にセットはなかった。あるのは巨大なスクリーンだけ。21日午後6時30分、450型(縦5メートル×横9メートル)のスクリーンがにわかに明るくなり、人気グループ2PMのJun.Kの顔が大きく映し出された。「こんばんは、大阪の皆さん、公演が始まります」という言葉が流れると同時に、客席のあちこちから歓喜の声が上がった。

 大阪オリックス劇場で、海外ミュージカルとしては初めて韓国の『ジャック・ザ・リッパー(切り裂きジャック)』が「シアタービューイング」(事前撮影された公演映像をミュージカル劇場のスクリーンに映し出すこと)形式で上演された。今回は、横浜で行われた実際の公演を収録し、大阪の大きな劇場でスクリーンに映し出した。450型のスクリーンは俳優の肌のきめまで見えるほどで、出演者一人一人、ステージの隅々まで鮮明に映っていた。Jun.Kが顔をしかめた時のしわ、舞台用のメークを施した女優の天を突くようなまつげ、アンサンブルキャスト(主役以外の大勢の出演者)が手にした小道具の英字新聞など、大劇場や実際の公演では見られない細かな部分もはっきり見えた。だが、カメラでクローズアップし、編集された映像に集中していると、どうしても公演全体を鑑賞するのが難しい印象だった。

 このシアタービューイングが映画と違うのは、映像以外のあらゆる環境が一般の劇場と同じという点だ。韓国の映画館は200席前後の規模がほとんどだが、その12倍の広さの劇場で大画面により楽しめるのだから迫力満点。本公演の前後にある特典映像も、通常の舞台公演では見られない。

 ミュージカルは現場の臨場感が命。ミュージカル劇場では最大1日2公演なので、どうしても映画より累積観客数が少なくなる。大劇場のない中小都市のファンは、大都市に「遠征」しなければなかなか見られないのも制約の一つだ。韓国でミュージカルといえばソウルが中心。5-6年前から日本でこうした制約を打ち破るために試みられ始めたのが「ライブビューイング」(リアルタイム公演中継)だ。公演の現場にいることを諦める代わりに得られるのはお手ごろ価格のチケットだ。『ジャック・ザ・リッパー』の横浜公演は1万6000円だが、大阪のシアタービューイングのチケットは5500円と3分の1程度になる。

 「公演」が終わり、客席を後にした人々は口々に「良かった」「面白かった」と感想を語った。『ジャック・ザ・リッパー』を何度か見ている記者も、大画面で見ることで劇場とはまた違った面白さを感じた。

 しかし、映画館に通う観客の足をミュージカル劇場に向けるには、チケット価格をさらに下げる必要性がありそうだ。『ジャック・ザ・リッパー』日本公演を主催する公演企画会社クオラスのマツノ・ヒロフミ公演ディレクターは「韓国ミュージカルの大劇場シアタービューイングは冒険だったが、予想以上に反響があった。今後徐々に拡大していく」と語った。

大阪= 申晶善(シン・ジョンソン)記者
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