インタビュー:「幸せな裏切り者」ペ・スビン

インタビュー:「幸せな裏切り者」ペ・スビン

 人生は予期せずして崩壊する。罪は罰を避け、秘密めいている。そして悪人になる。17日の日暮れ時、待ち合わせ場所のカフェでは照明が消え、代わりにろうそくの火がともった。俳優ペ・スビン(本名:ユン・テウク、36)の瞳の中にも明かりが揺れている。

 「僕は揺れ動く人が好きです。人は環境に支配されて変わっていくでしょう。根っからの悪人キャラだったら面白くないし」。KBS第2の水木ドラマ『秘密』でペ・スビンが演じているのは、検事任用を目前にひき逃げ死亡事故を起こすドフンという人物。7年間付き合った恋人ユジョン(ファン・ジョンウム)に罪をかぶせ、良心と現実のはざまで苦しみ、とうとう信念に背いてしまうという設定だ。

 ペ・スビンは「ユジョンが『私が罪をかぶる』と話すシーンは、演技だと分かっていても胸が痛みましたね。当為性がない悪役だったら演技するのも苦痛だったと思うけど、説得力があるから楽しいです」と語った。ドラマを撮ると、人間の本性について考えるようになるそうだ。「僕が演じるドフンがぶつかった現実は、誰にでも訪れる人生の分かれ道に似ています。権力の前にひざまずいたり、正義を望んだもののそれが独りよがりな正義だったという後悔の念が襲ってくる時があるでしょう?」。『秘密』ではこうした微妙な感情の動きが演じられて幸せだという。同ドラマは10月23日に視聴率15.3%(ニールセンコリア調べ、全国世帯基準)をマーク、同時間帯1位の座を守っている。

 出演作にはMBC『朱蒙-チュモン-』(2006年)、『トンイ』(10年)、『華麗なる遺産』(09年)、SBS『風の絵師』(08年)など高視聴率を出した作品が多い。作品の選択基準は「面白さ」だ。「『自分がテレビを見るなら何を見たいと思うだろうか』と自問自答したら、面白くてスリルがあって、次の放送が待ち遠しいような作品がやりたくなるでしょう。俳優としての表現を追い求めるなら低予算映画や舞台でもできますからね」

 趣味は写真・絵画観賞。「最近、スティーブ・マッカリーというアメリカのドキュメンタリー写真家の写真集を買いました。人生のいやらしい部分を芸術的な作品にする人です。演技も同じだと思います」。芸名「ペ・スビン」はデビューの時、デザイナーのハ・ヨンス氏(63)が、チョ・ヘイルの小説『行くことができない国』の登場人物の名前から付けた。この小説に登場するペ・スビンは殺人事件の手掛かりを握る、善悪がはっきりしない人物だ。「呼びやすくて中性的な名前じゃないですか。男女両方の面を持つ俳優が好きです。いろいろな表現方法を持っているから」

 1999年にSBSドラマ『順風産婦人科』の端役でデビューしてから14年。今年9月に結婚した。大きな野望はないという。「妻がドラマを見て面白いと言うんですよ。『次回が楽しみだ』って。それで十分です」

チョン・サンヒョク記者
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