「ねぇ、遠くから来たんだからもう少しおまけしてくださいよ」
「安くしてあげてるのに。だったら最初からタダでちょうだいって言ったら?」
新鮮な海産物がたくさん並ぶ魚市場の真ん中で、客と商人の駆け引きが始まった。2人は互いの心中を探りながらも笑顔を見せる。結局、買い物客の袋には、旬を迎えたコノシロ2匹が追加された。単なる魚市場ではなく人情が行き交う市場、それが仁川市の「蘇莱浦口」だ。
昨年1年間で蘇莱浦口には846万人以上が足を運び、観光客数は首都圏の市場で最多となった。新鮮な海産物と温かい人情のおかげで客足が絶えることのない蘇莱浦口。今月18日から20日まで3日間の日程で開催された「蘇莱浦口祭り」を訪れてみた。
蘇莱浦口祭りの会場は、初日の朝から来場者でにぎわっていた。水仁線の蘇莱浦口駅から魚市場に向かう道沿いには数百個の体験ブースが立ち並んだ。
体験ブースのうち最も人気があったのは「蘇莱の海産物つかみ取り」だ。参加者たちは幅10メートルのプールに入り、素手で旬のコノシロやウナギをつかまえ、釣竿でワタリガニを釣った。子どもたちは特別に用意された水遊び用のボートに乗り、網でウナギすくいを楽しんだ。
海産物つかみ取りブースの隣には、その場で調理してもらうコーナーもあった。来場者たちは自分で捕まえたウナギを焼いてもらったり、カニを蒸してもらったりして、その場で海の幸を味わった。蘇莱浦口の商売人たちは「一人で食べるにはもったいない味」として、蒸したワタリガニの無料試食イベントも行った。
このほかにも蘇莱浦口にはお楽しみがいっぱいだった。蘇莱鉄橋横のチャンド砲台跡地では、豊漁を祈願して行っていた「西海岸豊漁祭り」の「ペヨンシングッ」と呼ばれる儀式が再現された。ペヨンシングッとは西海(黄海)沿岸地域で行われる漁師の儀式で、船や船員の安全と豊漁を祈願するもの。伝統衣装に身を包んだ巫女(みこ)たちが儀式を行い、すぐ横では多数の漁船が行き交った。
会場には「伝統衣装体験」のコーナーもあり、王や将軍などの衣装を着ることができた。将軍の衣装を身に着けたパク・チュンヒョクくん(12)=仁川市南区=は「将軍の衣装を着ると本当に将軍になった気分。豊漁祭をバックに写真を撮ったらとても素敵な写真になった」と語った。
盛況だった蘇莱浦口祭りの初日の夜は「花火ショー」に彩られた。海辺のメーンステージで行われた花火ショーでは、羽ばたく火の鳥をイメージした爆竹が蘇莱浦口の夜空を華やかに飾った。花火ショーと同時に会場内の電飾オブジェへの点灯式も行われ、会場はさらに美しく輝いた。
今年で13回目を迎えた蘇莱浦口祭り。今回は「蘇莱を歌おう」がテーマで、西海(黄海)の美しさと浦口のロマンを満喫できる文化公演や体験イベントも行われた。