仏教経典の完結版を見に海印寺へ=大蔵経文化祝典

 523万3000字。仏の力でモンゴル軍の侵入を防ぐために、版木に刻んだお経の文字数の合計だ。これが、仏教経典の総結集「八万大蔵経」。世界で最も古い木版仏教経典とされるこの大蔵経の版木は、1995年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)記録遺産に指定され、その価値を認められた。

 このような大蔵経の素晴らしさを広く伝え、その精神をたたえるために、今月26日から45日間の日程で「2013大蔵経世界文化祝典」が開催される。会場となるのは、八万大蔵経を所蔵している海印寺(慶尚南道陜川郡)一帯。イベントに先立ち、大蔵経の真理に触れるために陜川郡を訪れてみた。

慶尚南道陜川郡にある海印寺一帯で、今月26日から45日間の日程で開催される「2013大蔵経世界文化祝典」の会場
▲ 慶尚南道陜川郡にある海印寺一帯で、今月26日から45日間の日程で開催される「2013大蔵経世界文化祝典」の会場

 祝典を楽しむなら、まずは「海印寺」からだ。海印寺は、海抜1430メートルの伽倻山のふもとにあり、1000年以上の歴史を持つ。この寺は、1251年に制作された八万大蔵経を現在まで所蔵している。海印寺の中にある「蔵経版殿」の入り口に立つと、目隠しの幕の間から、800年以上もこの地に保管されている大蔵経の木版が見える。

 今回の祝典の一番の見どころは、1200年ぶりに一般公開される「摩崖仏(まがいぶつ)」だ。摩崖仏とは、そそり立つ岩壁などに掘られた石仏のこと。摩崖仏のある場所は、海印寺の僧侶たちが修行するために訪れる厳粛な所で、摩崖仏と向き合うその瞬間は、俗世を離れて静寂な余裕を味わうことができる。

海印寺では、世界で最も古い木版仏教経典「八万大蔵経」を見ることができる
▲ 海印寺では、世界で最も古い木版仏教経典「八万大蔵経」を見ることができる

 海印寺を一通り見終わったら、祝典会場に移動してみよう。会場までの6キロの区間には、是非行ってみたい「ソリキル(音の道)」という遊歩道がある。紅流洞の渓谷に沿って歩くこの遊歩道は、仏教の八正道(人間が正しい生き方を実践するための八つの方法)をテーマに作られている。色とりどりの紅葉も見られ、いっそう優雅な雰囲気を味わうことができる。

 遊歩道を歩いていくと「海印アートプロジェクト」の作品が見えてくる。このプロジェクトは韓国で初めて、お寺の中で開催されている国際芸術祭だ。プロジェクトに参加したアーティストたちは、45日間の省察を経て、その苦悩を込めた作品を遊歩道脇に造成した。芸術作品を鑑賞しながら水の音、風の音に耳をすませると、心が洗われるような気分になる。

祝典初日には、大蔵経を移動させる行列を見学することができる
▲ 祝典初日には、大蔵経を移動させる行列を見学することができる

 最後に、祝典会場を見てみよう。会場はテーマ館である大蔵経千年館をはじめ、5D(5次元)立体映像館、高麗大蔵経歴史館など八つの展示室で構成されている。

 中でもメーン展示館の「大蔵経千年館」は、大蔵経展示室、大蔵経ロード室、大蔵経神秘室などテーマ別に九つのスペースに分かれ、制作過程から保存方法に至るまで八万大蔵経の全てが分かるようになっている。

大蔵経千年館には、韓国の代表的なメディアアーティスト、イ・イナム氏の「千年の合唱」が展示されている
▲ 大蔵経千年館には、韓国の代表的なメディアアーティスト、イ・イナム氏の「千年の合唱」が展示されている

 今回は特別に、木版の原版を見学する機会も設けた。イベント期間に会場内の展示館には計8点の原版が展示される予定だ。16年かけて制作された大蔵経版は、職人の息遣いと仏教の精神が垣間見える「本物」であり「名作」でもある。

 会場では5Dによる大蔵経映像を鑑賞できるほか、版画・人形づくり体験、蔵経木版づくりなどさまざまな体験プログラムも準備されている。

千年館の館内には、大蔵経の製作過程が模型で展示されている
▲ 千年館の館内には、大蔵経の製作過程が模型で展示されている

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