雨はいつ降ったのかと思うくらい強い日差しが照り付ける暑い夏だ。ジリジリ焼けたアスファルトの上に立つと、じっとしていても汗が流れ、少し歩いただけで息が上がってしまう。こんな暑い日には食欲もなくなりがちだが、暑さに打ち勝つためにはしっかり食べなければならない。
だが暑さなどものともせず、常に食欲全開の街がある。おいしい料理があふれる仁川だ。
■チャイナ・タウンで楽しむ「異色の中華料理」
仁川で最も有名なグルメストリートといえば断然、チャイナ・タウンだ。1軒おきに飲食店が並ぶほどで、伝統的な中華まんなどさまざまな中華料理が味わえる。
仁川チャイナ・タウンのシンボルとなっている中国風の門「牌楼(パイロウ)」を過ぎて100メートルほど進むと、行列ができている「十里香」という中華料理店が目に入った。
この店の名物「オンギビョン」は、陶磁器のかめを利用したチベットの伝統的な中華まんで、4種類の味がある。普通の中華まんと異なり、外側は焼けてパリパリ、中はモチモチだ。週末になると1人2個以上は買えないという驚くべき人気を誇る。
仁川チャイナ・タウンの「ヘッサル通り」を進むと、伝統的な中国建築の中華料理専門店「万多福」が現れる。
この店の名物は、100年前のチャジャン麺。通常のチャジャン麺は、チュンジャンと呼ばれる黒みそを麺と混ぜて食べるのが一般的だが、この店では、麺の上にチュンジャンを乗せたまま、香りと味を吟味しながらあまり混ぜずに食べるのが特徴だ。
100年前、野菜や調味料が手に入りにくかった時代には、チュンジャンと肉だけを炒めて麺に乗せて食べていたが、100年チャジャン麺はその料理を再現したもの。この店では、一般的な赤いチャンポン(辛い海鮮スープの麺料理)とは異なる白いチャンポンも食べられる。
■仁川最高のご当地グルメ「新浦タッカンジョン」
新浦市場の名物タッカンジョンは、長い間庶民に愛されてきた料理だ。かつて中国の船員たちが好んで食べていたもので、食べ物の保存が困難だった時代に、料理が傷まないよう工夫して作られていた。
タッカンジョンとは、油で揚げた鶏肉に甘辛いたれを絡めてピーナッツのみじん切りをまぶし、辛い青トウガラシを添えた鶏料理。つやつやで、見かけはヤンニョムチキン(甘辛いソースを絡めた鳥のから揚げ)に似ている。一つつまんで食べてみると、サクサクした衣と柔らかい肉が口の中で混ざり合い、味はもちろん柔らかさまで口の中いっぱいに広がってくる。
■暑いときこそ花平洞の「洗面器冷麺」
タッカンジョンに負けず劣らず有名なのが「花平洞冷麺」だ。コシのある麺に野菜や肉、卵を乗せて冷たいスープを注ぎ、酢とからしを混ぜて食べる冷麺は、夏に最適な絶品料理だ。
花平洞冷麺通りを訪れた人々は、3回驚くことになる。一つ目は「冷麺店が多いこと」、二つ目は「器が大きいこと」、そして最後は「非常に安いこと」。
「洗面器冷麺」との愛称でも呼ばれる花平洞の冷麺は、器の大きさが通常の冷麺の3倍。それなのに水冷麺もピビン冷麺(唐辛子みそダレであえた冷麺)も1杯5000ウォン(約430円)で、ほかの地域に比べ1500-3000ウォン(約130-260円)ほど安い。
量が多くて値段が安いからといって、味が落ちるというわけではない。さっぱりしたピリ辛スープとコシの強い麺は、花平洞冷麺ならではの味だ。
■酒のさかなに最適な「焼きサワラ」
最後に訪れたのは、東仁川の「焼きサワラ通り」。かつてこの通りには酒の醸造元があり、安くてボリュームのあるサワラは労働者や大学生たちの酒のさかなとして人気を集め、ここがサワラ通りとなった。
ここの人気メニューは、たれで焼いたサワラと塩焼きのサワラを半々にした「半々焼き」。韓国産のサワラを使っているため、外国産を使うほかの店に比べサイズが小ぶりだが、焼くと香ばしい香りがして臭みもなく柔らかい。甘いトウガラシみそのたれが淡泊なサワラの身とよく合って、自然と酒が進む。