16の小さな島々が点在する、絵画のように美しい港の風景。港に停泊している10トン級の船舶では、船員たちが横一列に並び、その後ろではカモメが横一列になって何かを待っている。「スーッ、スーッ」船員たちが独特の息遣いで網を引き揚げると、銀色に輝く宝石たちが空に向かって跳ね上がる。これが南海の名物「カタクチイワシ」だ。
慶尚南道南海郡にある弥助港では今、カタクチイワシ漁がピークだ。本格的な漁シーズンを迎え、南海郡は18日から2日間にわたり「第10回・宝島カタクチイワシ祭り」を開催した。ちょうど韓国では連休だったため、銀の宝石を求めて弥助港を訪ねた。
美しいことで有名な南海19号国道の起点。角を曲がると独特の海の香りが漂い、同時に港が見えてきた。「南海岸のベニス」と呼ばれる弥助港の周辺には、鳥島や虎島など小さな島々のほか、韓国の天然記念物第29号に指定されている常緑樹林がある。また、この地域は天の恵みである自然を満喫できると同時に、さまざまな特産物を生産しており、「宝島」との愛称でも呼ばれている。
港に着くと、銀色に光るカタクチイワシを大量に積んだ船が1隻、また1隻と港に戻ってきた。厳しい作業に疲れた漁師たちが、たばこを吸う暇もないままイワシをすぐ隣の直売所に運ぶと、直売所は水揚げされたばかりのカタクチイワシを売買する人々の声で活気付いた。
直売所を通り過ぎると、カタクチイワシ祭りの会場が見えてきた。今年はこの地が「弥助」と命名されて600周年に当たるため、今回の祭りは例年以上の規模で行われた。
メーン会場の物品販売コーナーでは、弥助産カタクチイワシの塩辛や刺し身などが販売されたほか、魚つかみ捕り体験、カタクチイワシの塩焼きの無料試食など、さまざまなイベントが行われた。
中でも最も盛況だったのが、漁師たちによる「網ふるい」のデモンストレーション。港では普段でもイワシ漁の船を見かけるが、祭りの期間中は特別に船に乗って海に出て、イワシ漁を見学することができる。
近くで実際に見たイワシの網ふるいは、遠くで見るのとは大違いだった。網をふるうたびに、手のひらサイズの多数のカタクチイワシが2メートル上まで跳ね上がり、その光景は実に壮観だ。作業に当たる漁師たちの顔はイワシのうろこと汗にまみれ、太陽の光を浴びてキラキラと輝いていた。
デモンストレーションが終わり、おなかもすいてきたので、弥助産カタクチイワシを実際に味わうため食堂に向かった。「カタクチイワシも魚なの?」とからかうような歌もあるが、この地域でカタクチイワシは立派な魚として扱われている。頭と尾ひれを取って、コチュジャン(唐辛子みそ)をたっぷり付けて食べれば、その味は格別だ。この地域の人々は刺し身、鍋物、焼き物、フライなどさまざま方法で調理したカタクチイワシを、コース料理で楽しんでいる。
中でも逸品なのが、生で味わうカタクチイワシのあえ物だ。気性が荒くすぐに死んでしまうカタクチイワシは、船ですぐに釜ゆでし、乾燥させてから配送するのが一般的だ。そのため通常は乾燥したカタクチイワシしかお目にかかれないが、産地では刺し身のあえ物が楽しめる。
生臭さがあるかと思ったが、生で食べるカタクチイワシには全く臭みがない。カタクチイワシは、サンマなどを干して作る「クァメギ」と味が似ているが、産卵期を迎えたカタクチイワシはもっとプリプリしていて脂が乗っており、かむと深い味わいが感じられる。また、小骨もかめばかむほど香ばしく、後味が残る。酢コチュジャンとセリであえた刺し身を味わっていると、食欲もそそられる。
南海・弥助港で2日間にわたり行われた「宝島カタクチイワシ祭り」は、昨年に比べ67%も多い6万5000人余りの観光客が訪れ、名実ともに地域の代表的な祭りに成長した。祭りは終わったが、6月までは弥助港で春のカタクチイワシが楽しめるため、暑い夏が来る前にぜひ一度訪れてみてはいかがだろう。