インタビュー:チェ・ガンヒ「演技を通して青春を知った」

インタビュー:チェ・ガンヒ「演技を通して青春を知った」

 チェ・ガンヒ(36)の顔には同じ時代を生きる平凡な女性たちの表情が映し出される。ドラマ『マイスウィートソウル』(2008年)で演じたのは理想と現実のはざまで揺れるワーキングウーマンだったし、映画『グッバイ、マザー』(09年)では大人になってからも母親と衝突ばかりしている娘だった。その泣き顔や笑顔は「うちのお姉ちゃん」や「うちの娘」、そして「オレの彼女」にそっくりに見えた。

 チョン・イクファン監督の映画『ミナ文房具店』(16日公開)でその顔に映し出されたのは、未婚の30代女性公務員の表情だった。二股をかけていながら反省の色がない彼氏を花束でひっぱたき、区庁の窓口に来た人に恥をかかされて大声を上げるその顔には、確かに怒りや疲れがありありと現れていた。13日、ソウル市鍾路区のカフェでインタビューしたチェ・ガンヒは「私が演じた人物たちは、ちょっと裏があって優柔不断で俗っぽいけど、それでも女でいたいと思っています。それを見せるから、世の女性たちは他人の話を聞いているかのように胸がスッキリするんです。それって本当は全部自分たちの話なんですけどね」と言った。話すたびに丸い目をパチクリさせ、一瞬言葉が途切れる。まるで何もないところから言葉を引き出しているかのように。

 『ミナ文房具店』には、小学校が「国民学校」と呼ばれていたころに通っていた現在の30代以上の人々が共感できるエピソードが満載だ。区庁職員のミナ(チェ・ガンヒ)は、突然倒れた父が経営していた文房具店を売りに出すため実家に帰る。私たちが小学生だったころ、登下校時に文房具店で学校で使う物を買ったり、その前でゴム段やおはじき、消しゴム集めをしたりながら遊んでいた姿がよみがえる。子どものころの懐かしい思いや父と娘の和解を描くこの作品は、心優しすぎて緊張感に欠け、共感しにくい部分もある。

 そんな映画評をぶつけてみると、チェ・ガンヒは「『ミナ文房具店』の台本をもらった時、一番最初に目に止まったのは父親のところでした。私が20代前半の時に父が他界したのですが、最後の最後まで父とはぎこちない関係でした。私自身、変だとは思っていたんですが、まわりもそう思っていましたね。娘は母親と仲良くなって、息子は父親にどう接していいか分からなくなって、そのうちみんな離れて行きます。母親と違って父親は自分の生き方について説明もしませんよね。私はこの映画に投影することで父親の話をしてみたかったんです」と答えた。

 10代のころ内気だったというチェ・ガンヒが36歳の今まで女優を続けてきたのも、もしかしたら父親のせい、いや、おかげかもしれない。女優やタレントに対する憧れも夢もなく、ひょんなことから入った演技の道も、父親がいなかったから続けざるを得なかった。「新人のころに賞をいただき、褒めてくださる方がいたので、女優を続けて経済的な問題を解決してきました。『マイスウィートソウル』を撮影していたころに借金を返し終わり、経済的にも安定しましたが、突然むなしく寂しい思いに襲われました。演技を正式に習ったことがなかったからか、ほかの俳優たちよりも演技が下手に思えてきて…。その時は女優をやめようと思って、一人でジタバタしていました。もう顔は売れているから商売をするのも難しいだろうし、外国に行こうと思っても英語ができないし。でもあらためて(自分が出演した)ドラマや映画を見てみたら、けっこうちゃんとやってるな…って」

 同年代の平凡な女性の顔を持つチェ・ガンヒだが、実は「平凡の生活をしたことがない」という。「作品では青春時代を何度も演じましたが、私自身は大学に通ったこともないし、同年代の人と一緒に遊んだりもしません。映画や本で見ると、青春ってキラキラしていて、しびれるほどキレイで、退屈しないものなんですね。だから青春という字が入っているものすべてにときめきます。ちょっと遅い感じはしますけど、ぜひ青春映画を撮ってみたいです。子どものころ無口で暗かった私ですが、明るく健康的な役を演じ、ラジオでDJをするうちに性格が変わりました。私は、自分自身の人生にはなかった学生時代も、会社で働く生活も演技で経験しました。つまり、映画やドラマを通じて普通の表情を持つ女性に成長したのです。だから、見る人が嫌な思いをするほど残酷な役や、いやらし過ぎる役をするのはまだちょっと怖いですね」

インタビュー:チェ・ガンヒ「演技を通して青春を知った」

卞熙媛(ピョン・ヒウォン)記者
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