2003年4月に日本列島を揺るがす大きな出来事があった。『冬のソナタ』だ。日本の公共放送NHKが開局以来初めて放映した韓国ドラマ『冬のソナタ』では「ヨン様」ことペ・ヨンジュンのとりこになる中年女性が続出、「ジウ姫」ことチェ・ジウに熱狂するファン数万人を生み、「韓流ブーム」の幕開けを告げた。それからちょうど10年。今度は韓国創作ミュージカルがアジア最大規模のカルチャー市場である日本をターゲットに据え、韓国でいえばソウル市江南区清潭洞のようにおしゃれで高級感漂う街、東京・六本木に専用劇場をオープンさせた。
日本最大手の総合エンターテインメント企業アミューズが運営、韓国のエンタメ関連最大手CJ E&Mがコンテンツを提供する「アミューズ・ミュージカルシアター」が25日にオープンした。日本人に人気の米国発パフォーマンス「ブルーマングループ」専用劇場だった「ブルーシアター」を1年間、韓国創作ミュージカル公演の専用劇場に変えたものだ。
二日続きで安倍晋三首相の極右的な発言が飛び出したが、同日午後7時にオープニング作品『カフェ・イン』開幕前に会場に集まった観客たちは「妄言は妄言、文化は文化」と一様に考えていた。ヤマグチさん(50代女性)は「政治的発言は文化を楽しもうというファンにとっては無力。このように観客があふれているロビーを見ただけでも分かるのでは」と語った。公演に協力・参加している顔触れを見ても、政治色とは関係のない文化の力をあらためて確認できる。設立68周年を迎えた芸能プロダクション「ワタナベエンターテインメント」、広告代理店「電通」、レコード・書籍販売会社「TSUTAYA」、業務用カラオケ関連企業「第一興商」など、日本のポップカルチャーをリードする大手企業のトップが名を連ねている。
オープニング作品『カフェ・イン』はコーヒー専門店で偶然出会った男女二人のラブストーリー。ミュージカル俳優ユン・コンジュとキム・ドヒョンの熱演に、客席からは笑いや拍手が湧き上がった。日本人モデルの石田ニコルは「韓国のミュージカルはきょう初めて見たが、思わず笑ってしまうほど面白かった」と語った。
韓国人が制作し、韓国人俳優が出演する韓国のミュージカルが東京の中心地に専用劇場を持った決め手は、大里洋吉アミューズ会長(66)の意向だった。大里会長はCJ E&Mと連携し「日本のミュージカル市場に韓国のミュージカルがきちんと紹介されなければ日本の市場は大きくなれない。初期に数十億ウォン(10億ウォン=約9000万円)損しても構わない。必ずやり遂げる」と語った。劇団四季と共に舞台公演市場を握る公演制作会社「東宝」の関係者は「政治と文化は無関係だということを示した大里会長の勇気ある決断に拍手を送りたい」と語った。
日本のメディアの取材熱も高かった。午後2時から行われた公開リハーサルにはNHK、読売新聞、産経新聞、朝日新聞、共同通信など30以上のメディアが集まった。共同通信の丸山幸子氏は「日本のミュージカルファンがわざわざ韓国に行って見ていた韓国ミュージカルが日本で常時見られるようになったのは画期的な転機」と話す。アミューズ・ミュージカルシアターでは『カフェ・イン』以降も約1カ月ごとに『シングルズ』『風月主』などが次々と上演される予定だ。