ステーキといえば真っ先に思い浮かぶのは、高尚なクラシックや甘美なジャズが流れる高級レストラン、そして深い香りの赤ワインなど、とにかく高級なイメージだ。近頃はファミリーレストランが増え、ステーキが以前に比べ身近に感じられるようにはなったが、今なおステーキを食べるときには「きょうはお金を使うぞ!」という覚悟が必要だ。
ところが、そんな覚悟を決めなくてもステーキが食べられる店が現れた。韓国では夜食にチキン、ピザ、豚足などが食べたくなると出前を頼むことが多いが、同じようにステーキが食べたくなったとき気軽に入れる店が登場した。ソウル市江南区ノンヒョン洞にある「ステーキレイブ(Steak Rave)」だ。
ハワイで「6ドルステーキ」と呼ばれる「ステーキレイブ」は、米国本社とライセンス契約を結び、2012年12月に江南区ノンヒョン洞に韓国1号店をオープンした。それからわずか3カ月だが、すでに口コミでうわさが広まり、平日でも退社時間になると空席がないほどだ。テイクアウトもできるため、昼食時に弁当代わりに購入していく人も多い。
価格は1人前7000-9000ウォン(約600-780円)と非常に手ごろだ。サイドディッシュは大半が1000ウォン(約86円)で、ステーキの量が足りなければ100グラム5000ウォン(約430円)で追加できる。では、値段が財布に優しいことは分かったが、味はどうなのだろうか。
「ステーキレイブ」でステーキ用に使われる部位は「ボトムサーロイン」で、日本では「シンタマ(内モモの下にある球状のかたまり)」といわれる。ほかのステーキに比べて価格が手ごろで脂肪分が少なく、淡泊な味が特徴だ。ステーキレイブがこの部位を使っている理由は、しつこくなく何度食べても飽きず、価格競争力があるからだ。
高級レストランで出される10万ウォン(約8600円)、20万ウォン(約1万7300円)のステーキと比べるのは無理がある。7000ウォンのステーキが伝えようとしているのは、ステーキが必ずしも正装しワインを添えて食べなければならない料理ではない、ということだ。楽な格好で友人たちとビールを飲みながら楽しむカジュアルなステーキ、もしくは夜食が食べたくなったとき気軽に食べられるステーキを目指している。つまり、真の大衆化を目指しているわけだ。
「ステーキレイブ」は今後、テイクアウト専門の小さな店舗と、パブのようなイメージの中小店舗に力を入れていく方針だ。主な商圏だけでなく、住宅街の路地などに小規模店舗をオープンし、ステーキの大衆化を目指すというわけだ。
認識の変化というのは決して容易なことではない。だが変わり始めた認識は、新たなトレンドとなり、最終的に大きな文化となる。韓国のステーキ市場は果たして変化するだろうか。「ステーキレイブ」の今後が注目される。