「後悔するはず。あなたは悔しがるはず。すぐに分かるはず。自分の過ちに」。イ・ハイの「IT’S OVER」の歌詞の一部だ。
昨年、デビュー曲「1,2,3,4」で音楽界に衝撃を与え、「怪物新人」と呼ばれたイ・ハイがさらに成熟し、1stアルバムを引っさげて帰ってきた。満16歳の少女が、大人顔負けに別れの曲を歌い、「もう終わった(IT’S OVER)」と叫ぶ。
「正直に言うと、まだ完ぺきに感情移入するのは難しいです。実際に経験していない“別れ”の話なので。それでも、作詞・作曲家の方たちのアドバイスのおかげで、うまく歌えたと思います」
イ・ハイの年頃では「別れ」より「初々しいときめき」の感情を表現するほうが似合う。実際に今回のアルバムの中で、自身の経験を基にした曲がある。「片思い」だ。イ・ハイは「2年ほど前、中学3年のときに片思いをしました」と打ち明けた。これを知った作詞家がイ・ハイの話を基に歌詞を書いたのだ。
「告白どころか、彼女がいることすら知りませんでした。いつも同じ場所にいる先輩でしたが、ただ見詰めるだけでよかったんです。『K-POPスター』に出演してから、会う機会がなくなり、片思いを終わらせました。誰かって? 話すのはここまでにします。そのほうが美しいじゃないですか」
片思いの思い出をよみがえらせ、へへっと笑う姿は間違いなく少女だ。はっきりした目鼻立ち、澄んだ瞳がキレイだ。減量したからか、女性美も漂う。30、40代の中年ファンだけでなく、50代のお父さんファンまで幅広い年代から愛されているイ・ハイ。今後、さらに輝きを増していくだろう彼女の魅力は予測することすら難しい。
「皆さん、キレイになったと言ってくださるんですが、わたしは顔で勝負するアーティストではないじゃないですか。今も同じです。わたしも女性なので、キレイになりたいという願望はありますが、歌っているときに魅力的な雰囲気で、美しく見えればうれしいです」
イ・ハイの音楽カラーははっきりしている。レトロソウル風のデビュー曲から今回のジャズ、ブルースまで難なくこなした彼女は、年齢に似合わぬ表現力を発揮する。米国ビルボードの有名コラムニスト、ジャフ・ベンジャミン氏はイ・ハイのボーカルについて「潜在能力は無限大。彼女の歌声はアデル、あるいはダフィーのように聴衆を魅了する力がある」と注目した。
多くのアーティストが毎回アルバムを出すたびに「自分(たち)のカラーを明確に打ち出したい」と抱負を語る。そのような点を考えると、イ・ハイはすでに別格だ。SBSのオーディション番組『K-POPスター』で検証されたイ・ハイの歌唱力と豊かな感性が、YGエンターテインメントのヤン・ヒョンソク代表の手によって磨き上げられたという評価だ。
ただし、突然の人気に加え、周りの期待や称賛が若い新人アーティストにとっては、むしろ重荷になりかねない。ヤン・ヒョンソク代表の全面的なサポートも時には負担になりうる。イ・ハイは「違和感を感じるほどの人気ではない。全てに感謝するだけ」と話した。
教科書に出てくるような模範解答だった。しかし、彼女の独特な堂々とした感じは残っていた。「ヤン社長(代表)がそんなに負担になるぐらい、よくしてくれたわけではないと思いますけど…、ハハハ」。イ・ハイは急に話を変えた。「一つ一つ気を遣ってくださり、わたしが未熟な部分を満たしてくださるので、本当にうれしいです」。この少女、なかなかだ。