「失敗はなかったです。数作品は大成功もしたし。でも、100%満足する作品はないですね。いわゆる代表作のようなものです。ロベルト・ベニーニの『ライブ・イズ・ビューティフル』のような映画が1作品でもできればいいのですが…」
キム・レウォンはこれまでの俳優人生をこのように語った。中学生のとき、青少年ドラマ『私』でデビューして16年。ドラマ『屋根部屋のネコ』でスターダムにのし上がったあと、数々の映画やドラマで主演を務めた。順風満帆の俳優人生を歩んでいるように見える彼の自己評価は、予想外に大変厳しいものだった。
彼と会ったのは1月7日、ソウル市鍾路区新門路のカフェ。主演を務めた映画『マイ・リトル・ヒーロー』(キム・ソンフン監督、チョイス・カット・ピクチャーズ制作)の公開2日前だった。キム・レウォンの映画出演は『仁寺洞スキャンダル-神の手を持つ男-』(2009年)以来4年ぶり。除隊後初作品でもある。
『マイ・リトル・ヒーロー』は見栄っ張りの三流音楽監督ユ・イルハン(キム・レウォン)が、人生大逆転を狙って参加した大型ミュージカルオーディション番組で、優勝確率ゼロの少年ヨンウン(チ・デハン)とパートナーとなり、不可能な夢に挑戦するという物語。
結論から言えば、キム・レウォンは自分が最も得意とする演技をした。しかし、彼が演じるキャラクターは、「リトル・ヒーロー」ヨンウンの影に隠れて、十分には見えない。キム・レウォンは「意図していたことだった」と話した。
「もし僕がもっと目立とうとしたら、違う演技をしていたと思います。ユ・イルハンのように軽くなく、初めからシニカルに。観客が関心を持つように、ということです。そうしたら、僕はもっと引き立っていたと思います。でも、逆に完成した作品のように、温かみのある純粋な雰囲気は出なかったでしょう」
『マイ・リトル・ヒーロー』は観客によって受け取り方が違う。ヨングァンの視点で見ると、多文化家庭(国際結婚家庭)の子どもが世の中とつながりながら成長していく物語だし、ユ・イルハンの視点で見れば、貧しい芸術家の人生に関心が向く。見方によっては、あまり成長していない大人と、精神年齢の高い子どもの物語と映るかもしれない。キム・レウォンは「ある子どもの成長に関する映画」と定義した。
「ヨングァンが歌う姿に僕も胸が締め付けられました。お尻が腫れるぐらい練習しながらも、幸せそうな様子から、自分の幼少期を思い出したりもして。僕もその子のように演技を始めました。上手にやりたいのに、思った通りにできなくて悔しがりながら。『マイ・リトル・ヒーロー』はそれなりに満足する作品です。もちろん、力が入りすぎた部分はありますが、僕の演技も悪くないと思います」
劇中、ユ・イルハンは成功のためにまい進する。俳優キム・レウォンもそうだ。しかし、成功の基準は普通の俳優とは異なる。「プロセスを成功させたい」と話した。
「ロールモデルはハン・ソッキュ先輩です。4人の子どもの父親でありながら、俳優としても完ぺきでしょ。人間的にも素晴らしい方で。僕は『ライフ・イズ・ビューティフル』のような映画を1作品でも作れれば、俳優を辞めることもあるかもしれない。40歳ごろがちょうどよさそうですが、結婚したら家庭を充実させたいです。自分の家族をキム・レウォンの息子・娘として生きるようにはしたくはないんです。もちろん、今のところ希望にすぎませんが。そうしようと思えば、今はもっと一生懸命生きないといけませんね」