11日より東京・赤坂ACTシアターで上演中の韓国オリジナルミュージカル『ウェルテルの恋』で主役のウェルテルを演じている俳優キム・ダヒョン。人気・実力を兼ね備えたミュージカル界のホープといわれているが、日本ではドラマ『乾パン先生とこんぺいとう』のチ・ヒョヌ役、『ペク・ドンス』のキム・ホンド役といえばその顔が浮かぶかもしれない。デビューは、ロックグループ「YADA」で、ボーカル&ベースを担当していた。そんなキム・ダヒョンが『ウェルテルの恋』やミュージカル、演技への思いを語ってくれた。
―『ウェルテルの恋』は2003年にミュージカルデビューした作品でもあり、「コッペル」(花のウェルテル)と言われ人気を博したわけですが、この作品には特別な思いはあるのでは?
「最初にやったミュージカルで、特に韓国創作作品で、恋の話でした。とても魅力的で、その後他の作品をやりながら、ウェルテルだけはもう一度やりたいと思っていました」
―念願かなって、韓国でも昨年、久しぶりにこの作品をやったわけですが、以前とはここが違うところは?
「10年という期間の、他の作品でのさまざまな経験や蓄積をもとに、感情の表現や、キャラクターを理解して状況に合わせて演じられるようになったと思います」
―今回の『ウェルテルの恋』は、本格ミュージカルスターによる公演という点で、日本のミュージカルファンにどのようにアピールしたいですか。
「それが、すごく重要なポイントだと思います。数々のミュージカルが日本でも上演されていますが、この作品は歴史の長い創作もので、韓国の制作陣、ミュージカル俳優によるもので、韓国の情緒、システムを日本の方に伝えたい。日本の観客とともに作ってくということを大事にしたいと思っています。そしてこれからも本格ミュージカルがどんどん日本でやれればいいと思うし、逆に日本のものを韓国で上演するなど、文化交流が進めばいいと思っています」
―日本で上演される韓国ミュージカルはK-POPアイドルの起用で話題を呼んでいる作品が多いのですが、どのような感想をお持ちですか。
「これまでのミュージカルの視点がアイドルの主演にあったとしたら、今回は、作品性と完成度にあると思います。今までと違って保証できるのは作品の完成度、キャラクターの表現力。ウェルテルとして、観客と一緒になって通じ合うことができるとプライドを持って言えます。そして、これをきっかけに、日本のミュージカル業界からのオファーがたくさん来ることを期待しています(笑)」
―バンド「YADA」で99年にデビューされたわけですが、もともとアイドル志向でなく、そういった誘いを断って、バンドを選んだそうですね。
「多くのアイドルグループを排出している韓国最大手の事務所からも誘われましたが、もともと演技が専攻だったので、ダンスグループのオファーはずっと断っていました。そして、音楽をしっかりやってみたいと思い、バンドのオファーを受けることにしました」
―そこから、ミュージカルの世界に進んだきっかけは何だったのでしょうか。
「もともとミュージカル俳優は夢でした。そして、そのころ音楽市場が違法ダウンロードの横行などもあり縮小するなど、一生頑張って音楽を作ることにやりがいを見いだせない気持ちになり、夢だった演技のできる道へ進むことにしました」
―韓国では昨年は6作品にも出演し、この作品と別のミュージカル『ROCK OF AGES』をほぼ平行して出演されていましたが、違う演目を同時期に演じるのは難しくないのでしょうか。役の切り替えは簡単なほうですか。
「それこそ、俳優をしている理由といえるのではないでしょうか。まったく問題ないと思います。空間性というか、『ウェルテルの恋』の舞台に立つと、『ここがウェルテルの部屋』と、そこに入った瞬間、ウェルテルになりきれるんです。ほかの舞台でも同じです。役の切り替えが簡単というのとは違うかと思います。心持ちにかかっていると思います」
―ドラマや映画の映像分野でも活動されていますが、それほど比重は多くないですよね。
「これから比重を多くしたいとは思っています。実は、最初にドラマをやったとき大変だったので、二度とやらない、と思ったんです。その後ミュージカルに集中していて安定してきたし、映像分野も、小さい役でも少しずつ知りたくなったんです。なので、今年はドラマや映画にも比重を置いていきたいです。ミュージカルはもちろんしっかりやりたいので、これ以上忙しくなるのが心配ですが(笑)」