インタビュー:『タワー』で一皮むけたソン・イェジン

インタビュー:『タワー』で一皮むけたソン・イェジン

 清純かれんな美人女優の代名詞だったソン・イェジン。カリスマ性あふれるミステリアスな女性、年下のイケメンから愛されるお姉様、幽霊が見えるという不思議な魅力を持つお嬢さんへとイメージチェンジを繰り返した。今回、映画『タワー』では、大火災が発生した108階建ての高層ビルで死闘を繰り広げ、生命力あふれる女性の姿を披露。昔、余命わずかのやつれたヒロインを演じていたことを思うと、驚きの激変ぶりだ。

 撮影現場での立ち振る舞いも変わった。CGが必要となる制作費100億ウォン(約7億8600万円)の映画も初めだった上、ソル・ギョング、キム・サンギョンら先輩俳優と交流し、遅くまでビールを飲んでいたのも今回が初めてだったという。2次会のカラオケの予約担当だったというソン・イェジンは「頼もしかった。幸せだった。だからこそ『タワー』がヒットすることを願っている」と撮影当時を振り返りながら語った。

-こういう姿は初めてですね。現場で末っ子のようなソン・イェジンも、100億ウォンが投じられた超大作のヒロイン、ソン・イェジンも、完全に壊れたビジュアルも。

「負担が減りました。役割がすべて分けられていて、わたしは単純に与えられた役割をこなせばよかったので。じたばたしなければいけない場所ではじたばたし、泣き叫ばなければいけない場所では泣き叫びながら、シンプルになった感じというか。精神的にはすごく幸せでした。予算のことを考えれば、興行的な面で負担を感じなければならないのに、気持ちは穏やかです」

-演じ方自体が変わるジャンルですが。

 「なぜ、ソン・イェジンがこの作品に出演したのか、と思うかもしれないということに最近気付きました。役者の個性が出しづらいので。振り返ってみると、今まで一人で背負ってきたものを下ろして、素晴らしい人たちに助けてもらいながら一緒にやりたいと思っていました。現在の技術力の最先端をお見せできる作品に参加できるという意味も大きかったし、もちろん大きなスケールへの好奇心もありました」

-撮影現場での立ち振る舞いが大きく変わったというのは、そういう理由からなんですね。

 「いつも自分のキャラクター、自分の演技について、一人で考えて集中しようとする傾向がありました。感情も整えて、一人でコントロールをしなければならなかったので。でも、今回の映画は、周りの方たちにすごく頼りました。肉体的に本当に大変でした。転んだり逃げたりするにも先輩がいてくれたので、頼もしかったです。内面の何かを完成させて見せる作品ではないけれど、一緒に作業をしながら多くのことを得ました。すごくためになりました」

-共演した俳優が「ソン・イェジンがそういう人だとは思わなかった」とか「女優ではなかった」と言っていましたが。

 「お酒をたくさん飲んだし、イタズラもしたし、楽しく遊んだと思います。体力的には大変だけど、大変になるほど絆が強くなるのではないでしょうか。でも、そこに素晴らしい人が集まる。皆、大変な撮影をしているけど、お互い心の中で応援している感じがしました。本当に家族みたいで、実の兄みたいだったというか。またメークをするのが大変なので、血ノリを付けたまま集まって、汚れた手でご飯を食べたんですが、お互いに『見ちゃいられない』と笑っていました。わたしもトレーニングウエアを着て、すっぴんで原始的な姿を何度も見せたと思います。自分をすべてさらけ出して楽に、飾らずにいたというか。こういう現場は初めてでした。特に女優にとっては、なかなか経験できない感じではないでしょうか」

-死の恐怖に直面する役ですね。実際に起こりうる事故という点で、より心に響くものがあったと思いますが。

 「もちろんです。最後に脱出を図るシーンがありますが、一カ所に集まった人たちが、これがダメなら死ぬという恐怖に怯えるようになります。皆、大きく息をしながら泣いたりしたんですが、撮影が終わってからも、余韻が残っていて涙が止まらなかった。そういう感情は初めてでした。想像の話であり演技だったのに、ゾッとしました。一時、死ぬ演技が多くて、あえて死ぬことを避けようとしない役をたくさん演じたのに(笑)。それともまた違いました。あ、また死ぬ演技をしなきゃいけないかしら(笑)」

-本当に何かを下ろしたという気がします。

 「誰かがわたしを評価することに、いつもナーバスになっていました。信じて言った言葉が膨らんで、間違って伝わると、さらに心を閉じて、狭く深くいくようになりませんか。今はそれが重要なことではないと思っています。今まではわたしの本心を周囲が違うふうにとらえているのではないかと心配していましたが、今は怖さがなくなったというか。自分にこういう面があったのか、とも思います」

-年末を『タワー』で締めくくり、新しい年を迎えますが。

 「観客が韓国映画を好んでくださるのが、本当にありがたいこと。昨年の12月31日が数日前のことのように感じますが、もう1年が過ぎ、映画をお披露目することになりました。一緒に仕事をした人たちにも幸せになってほしいと思っているので、ヒットしたら喜びも倍になると思います。これで年末、そして来年のスタートが幸せな気持ちで迎えられたらうれしいです」

キム・ヒョンロク記者
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