「チケット発売開始から数分で売り切れ」というフレーズは、彼の前では意味がない。用意されたチケットは2万枚、「何が何でも買いたい」というファンは20万人。JYJジュンス(26)のソロコンサート「2012 XIA Ballad&Musical Concert with Orchestra」(12月29-31日)は先月4日午後8時にチケット販売サイト「インターパーク」で発売されると同時に20万人のアクセスが集中、3日間分・2万1000席が完売した。ジュンスが2010年に『モーツァルト!』でミュージカル・デビュー、ソウル・世宗文化会館大劇場の4万5000席(15公演)を完売させると、ほかのアイドルも次々とミュージカルに挑戦。だが、誰もジュンスほどのチケットパワー(集客力)は発揮できなかった。31日の年越し公演は、なぜジュンスが単なるアイドルではなく、大型スターなのかを証明したステージだった。
会場はソウル市江南区のコンベンションセンター「COEX」Dホール(7000席)。31日夜10時から始まり、1日午前1時まで約3時間にわたり行われた。公演数時間前からCOEX1-3階の女子トイレはどこも慶尚道方言や全羅道方言、中国語、そして日本語が聞こえてきた。そして通路にはスーツケースを引く30代以上の女性たちも多かった。
公演は『モーツァルト!』の劇中歌「僕こそ音楽」「影を逃がれて」で幕を開けた。続いて昨年の第18回韓国ミュージカル大賞で主演男優賞を受賞した『エリザベート』の「最後のダンス」、「いつか演じたい作品」だという『ジキル&ハイド』の「時が来た」を熱唱した。天性の歌唱力に訴えかけるような声と感性は「歌=演技」であるミュージカルで成し遂げたジュンスの成功が運によるものではないことを証明した。
観客のハートをさらうステージ上での輝きも素晴らしかった。「両手でほおづえをついて」「ボタンを一つ外して」など相次ぐ客席の声に応えるようなそぶりを見せてじらすことも。「今年で(数え年で)27歳、アイドルで言えばひいおじいちゃんになりました」と冗談を言う余裕もある。ソロアルバム「TARANTALLEGRA」のハードなダンスを披露し、「ダンスがどんなにハードでも、番組に出られるなら全身を燃やし尽くしたい」と言うと、会場の屋根が崩れそうなほどの大歓声が沸き起こった。ファンにとって、ジュンスはスターである前に、「外圧」や逆境に屈しないあこがれの的であり、応援したくなるお兄さんのような、そして世話をしてあげたくなる弟のような存在なのだ。
この日の公演のサプライズ・ゲストは母親のユン・ヨンミさんだった。ジュンスは「長年の夢が今日かないました」とヨンミさんをステージに呼んだ。声楽家が夢だったという母親に、ジュンスはデビュー前、「将来歌手になって母さんの夢をかなえてあげるよ」と約束したという。息子と一緒に韓国の昔のヒット曲「ガチョウの夢」を歌ったヨンミさんは「皆さんありがとうございます」と涙をこぼした。ジュンスの次のミュージカル出演作は未定。今年上演される大作ミュージカルのほぼすべてが彼の出演を待っている。7月に再上演される『エリザベート』に出演が決まったという話もあったが、所属事務所C-JeSエンターテインメントでは「JYJの活動期間が未定なので、ミュージカル出演時期も流動的」と話している。