11月末、ベトナム・ホーチミンの新興開発区域、フーミーフンにあるロッテリアでは、テレビ画面から韓国の女性アイドルグループのミュージックビデオ(PV)が流れていた。ここはベトナムの若者たちに人気のスポットだ。大学生のウン・トゥイ・ユンさん(22)はPVの中の歌手を知っているか、という記者の質問に「T-ARA」だと答えた。この大学生は「普段からK-POPをよく聞いていて、韓国の化粧品も気に入っている。韓国ドラマの中で見た韓服(韓国の民族衣装)を絶対に一度着てみたい」と話した。
ベトナム国家大学ハノイ校外国語大学・韓国語韓国文化学部2年生のウンウェイ・ブー・ハエプさん(20)は「『韓国』という言葉を聞くと、サムスン、現代など大企業が真っ先に思い浮かぶ」と話した。卒業後はベトナムに進出している韓国の電子企業で通訳として働くのがウンウェイさんの目標だ。
「発展した国」「韓服、キムチの国」「すてきなドラマや芸能人の国」…現地で出会った若者たちは韓国についてこのように話した。「ベトナム戦争参戦国としての韓国」を思い浮かべると不愉快な気分にもなりかねないが、そのような「過去」に触れる若者はほとんどいなかった。韓国のベトナム戦争参戦の事実を知らなかったり、知っていたとしても過ぎたことについては気にしなかったり_という態度だった。
ベトナムで韓流に熱狂する世代は、主に1980-90年代に生まれた世代で、現在のベトナムの中心となっている。ベトナムの全人口8800万人の平均年齢は28歳(2010年時点)で、35歳未満が人口全体の60%を占めている。この世代は、ベトナム戦争後のベビーブームの時期に生まれた世代だ。
ベトナムの生産と消費をけん引するのもこの80-90年代生まれの世代であり、ベトナムに進出した韓国企業で働く労働者も大半がこの世代の人たちだ。
この世代は、戦争が終わり、ベトナムが改革・開放と経済成長に本格的に向かい始めた時期に生まれた。戦後世代にふさわしく経済活動に積極的で、外国文化に対しても開放的だ。この世代の若者たちは1992年にベトナムと韓国が国交を結んだ後、輸入された韓国製品を使い、韓国ドラマを見て、韓国の食べ物を食べて育った。つまりベトナムの「親韓」世代といえる。
さらにこの世代はインターネットと携帯電話を通じ、韓国で流行するドラマや音楽にリアルタイムで接しており、現地の韓流ブームを主導している。2009年に韓国文化産業交流財団(KOFICE)がベトナムの10-30代104人を対象に行った調査では、回答者の半数程度が「外国の大衆文化のうち、韓国のドラマ、映画、音楽が最も好きだ」と答えた。「ほとんど毎日」あるいは「週に2、3回」韓国ドラマや音楽など韓国の大衆文化に接しているという回答も80%に達した。
ベトナム・ハノイ韓国文化院のパク・ナクチョン院長は「韓国文化はベトナムと似ており、現代的であるため、ベトナムの若者たちが好んでいるようだ」と話した。韓国の俳優は米国など西洋の俳優に比べて親近感がある上、礼節を重視する文化や家族中心の価値観が似ており、ベトナムの若者たちが共感しやすいという。また、韓国ドラマは中国や日本のドラマに比べて面白く現代的なため、ファッションやヘアスタイルなど流行に敏感な80-90年代生まれに人気があるという。
この世代の間での韓国人気は、韓国語学習ブームにもつながっている。ベトナムの大学では、正規の韓国語教育が急速に広まっている。1993年に国家大学ハノイ校人文社会科学大学に韓国語課程が副専攻として初めて開設されて以来、現時点で韓国語科あるいは韓国語学専攻が設置されている大学は13校に達しており、韓国語の専攻者は2516人に増加した。
西江大国際大学院のホ・ユン教授(元ベトナム・タイグエン大学招聘〈しょうへい〉教授)は「韓国とベトナムの関係の未来を、韓流効果を超えて一段階発展させるためには、大胆な支援と投資によって、ベトナムで親韓派のエリートを養成すべきだ」と話した。「韓国語専攻者だけでなく、理工系など多様な分野のベトナムの若者たちを韓国の高等教育機関で研修させ、韓国でも若い『ベトナム専門家』を育成し、人的交流を拡大すべきだ」と話した。