東仁川をめぐるグルメの旅

東仁川をめぐるグルメの旅

 東仁川駅の周辺は、1980年代に京仁電鉄駅ができると同時に金融や行政、商業など仁川の中心地となった。だがその後、仁川北部や南東圏の都市の成長、松島や青羅国際都市の開発と共に、東仁川は「旧都心」という扱いになっている。それでも今なおこの場所は、仁川や首都圏の市民に愛され続けている。タッカンジョン(甘辛ダレを絡めた鶏から揚げ)、焼きサワラなど、名物料理があるからだ。

 メディアでは連日、東仁川のおいしい店が紹介され、市場や食べ物横丁などでは大勢の人々が行列をつくっている。東仁川には名物のおいしい香りが漂い、冬の渡り鳥と同じように、この地に来ると食欲も戻ってくるようだ。

■一度食べたらやみ付き、新浦国際市場タッカンジョン

 東仁川といえばタッカンジョン、タッカンジョンといえば東仁川といわれるくらい、東仁川のタッカンジョンは有名だ。インターネットでタッカンジョンと検索すると、多くのネットユーザーが東仁川の「新浦市場タッカンジョン」を薦めている。タッカンジョンが、さびれかけていたこの地域の商業圏を再び活性化させたほどで、その人気は説明するまでもない。長い説明など必要なく、とりあえず食べてみることにした。

 新浦市場を訪れたのはやや早めの昼食タイムだったが、すでに大勢の人々が列を成しており、容易に店を見つけることができた。不思議だったのは、店で食べる人の列とテイクアウトの列が別にできていたことだ。

 揚げ物料理は一口目のサクサクした衣の食感が重要だが、新浦タッカンジョンはこのような「公式」を徹底的に守っている。タレを絡めてじっくり炒める一般的なタッカンジョンとは異なり、ここのタッカンジョンはやや水っぽいタレでから揚げを軽くあえる程度だ。このため、タレのせいで衣がべたべたになることはなく、サクサクとした食感が残っている。

 また、辛い青トウガラシの香りは、食べたときだけでなく、肉が喉を通った後も舌に残る。タッカンジョンを食べると、知らず知らずのうちに、唇がひりひりするほどタレを付けて食べている自分がいることに気付く。

 タッカンジョンの店を営むキム・オクチャさん(64)は「30種類の薬味でタレを作り、鶏肉も何日も熟成させ、ようやく新浦タッカンジョンが出来上がる。これは誰にもまねできない」と誇らしげに語った。

■季節を問わず人気の花平洞冷麺

 東仁川でタッカンジョンと同じくらい有名なのが「花平洞冷麺」だ。この店の冷麺は仁川港開港後、北朝鮮出身の人々によって伝わったもので、港の労働者たちがおなかいっぱい食べられるよう、大量に盛られているのが印象的だ。

 実際にここの冷麺は、夏に食欲が落ちたとき普通の食事代わりにするようなレベルではない。「洗面器冷麺」という愛称で呼ばれ、これを食べる前には心の準備が必要なほど、ものすごい量が出てくる。

 注文した水冷麺とピビン冷麺(唐辛子みそダレであえた冷麺)が出てくると、テーブルはもういっぱいだ。間違えて二人前を頼んでしまったのではないかと考え込むが、店員は笑って「これが普通の量」と教えてくれた。30センチほどの大きな器に、軽く1リットルは超えていそうなスープと麺がたっぷりと入っており、見ているだけでおなかがいっぱいになる。

 さらに驚いたのは、この冷麺が5000ウォン(約380円)もしないということ。最近はハンバーガーセット一つでも1万ウォン(約750円)紙幣を出さなければならないくらいなのに、花平洞冷麺はずっとこの場所で独自のやり方を貫いている。

 量が多い上に値段も安い花平洞冷麺。だが、量と値段だけで花平洞冷麺を語るのはここの冷麺に失礼だ。東仁川の冷麺は、その味も決して量や価格に負けていない。

■酒のさかなにピッタリの焼きサワラ

 最後に訪れたのは、東仁川の「焼きサワラ通り」。ここは昔、酒の醸造元があった場所で、安くてボリュームのあるサワラが労働者や大学生たちの酒のさかなとして人気を集め、サラワ通りが形成された。

 路地を入ると、香ばしい焼き魚の香りが鼻の奥まで伝わってきた。この通りの店は主に夜に営業しており、夕方の早い時間から焼きサワラと酒を注文する人たちでいっぱいだった。

 サワラ通りの人気メニューは、サワラのたれ焼きと塩焼きを半々に盛った「半々焼き」。韓国産のサワラを使っているためほかの店に比べサイズは小さいが、焼いたときの香りが良く、生臭さもなくて柔らかい。甘辛い唐辛子みそベースのタレが淡泊なサワラとよく合って、自然と酒が進む。

 一方、韓国政府が毎年10月の最終木曜日を「マッコリ(韓国式濁り酒)の日」と定めたため、この通りの店主たちは、仁川の代表的なマッコリ「邵城酒」と共に、焼きサワラ通りが生き残れるよう努力し続けている。

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