【コラム】流血と暴力に満ちた週末の大河ドラマ

▲金泰勲・国際部次長
▲ ▲金泰勲・国際部次長

 先週の土曜日、夕食を終えて家族と一緒に居間で腰を下ろしてテレビをつけた。たまたま、その日に第1話が放送される大河ドラマが始まったのを見て、すぐにテレビを消した。週末の夕方の気分を台無しにしてしまう殺戮シーンを見るのは必然で、むやみに人を殺す暴力シーンを子どもたちに見せるのも嫌だったからだ。

 自分の部屋で、一人でテレビをつけて見た。時計を見ると、番組が始まってからわずか3分ほどで、すでに斬り合いの真っ最中だった。最初の戦いは、槍で胸を刺し貫かれた兵士が即死する場面で終わった。それからおよそ10分後、再び殺人劇が始まり、凶器が胸に刺さるシーンがアップで映し出された。60分のドラマを見ている間、武器を振り回して人を殺すシーンはさらに34分ごろと51分ごろに1回ずつ、そして番組が終わる直前にもう1回、計5回登場した。ドラマを1本見る間に、少なくとも50人以上が血を流し、命を落とした。

 翌日の夕方、あえてそのドラマの第2話を視聴した。放送が始まってから2分くらいたったころ、最初の死人が登場し、続く30秒間にさらに4人が命を落とした。この戦いのラストカットは「どうか命だけは助けてほしい」と命ごいをする兵士の胸を、円月刀のような大きな刀で無慈悲に刺すシーンだった。これはあんまりではないのか。大勢の人がぞっとするような方法で人を殺すシーンを、週末の夕方に全国の家庭に放映するテレビ局が、韓国以外のどこにあるのかと不快に感じた。「見たくなければチャンネルを変えろ」という反論や「15歳以上視聴」の案内などは、公共の電波が持つ無差別的波及力やその公共性に照らして考えると、無責任な弁明に過ぎない。上の子は15歳を過ぎたが、不意にテレビをつけ、人の命をむやみに奪う殺傷劇を見ることになるのかと思うと心配だ。

 二日間視聴した大河ドラマのタイトルは『大王の夢』。三国統一の基礎を固めた新羅の太宗武烈王、金春秋(キム・チュンチュ)のリーダーシップにスポットライトを当てた作品のため、古色蒼然とした戦闘場面や人の死は「目の保養」として視聴者をそそのかしているように見えた。このドラマだけではない。同じ時間帯に放送されているほかの時代劇も、ほぼ全てが週末の夕方を血と断末魔の悲鳴で染めるようになってから、既に久しい。少し前に終わったドラマ『広開土太王』も、韓民族の活動の舞台を広めた英雄の物語なのか、希代の虐殺者の話なのか、見分けがつき難かった。その上、時代劇の暴力シーンが益々凶悪になっている点も問題だ。刃物が体に刺さり四肢を切断する場面が余りにも詳細に映し出され、ぞっとして目を向けていられない。

 ソウル市瑞草区蚕院洞で一昨年発生した持凶器殺人事件の犯人は、毎晩のように剣で戦って人を殺すコンピューターゲームをするうちに、犯行に至ったことが分かった。また最近、韓国国民を不安に怯えさせている性的暴行犯たちは、いずれもポルノ動画を好んで見ていたという共有点を持っている。精神科の専門医や犯罪の研究者たちは、殺人・性的暴行など凶悪犯罪者の暮らしには、こうした「悪い映像」が染みこんでいると指摘する。刺激と暴力で彩られた映像が脳を中毒状態に陥れ、仮想の世界と現実が混同するようになり、衝動を抑える力が低下するという。人を虫けらのように扱う時代劇を、テレビ局自体が抑制しないのなら、強制的にでも過度の暴力シーンを放映でないよう何らかの手段を講じるべきだ。

金泰勲(キム・テフン)国際部次長
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