【コラム】韓流の敵、ドラマの間接広告

▲チェ・スンヒョン大衆文化部放送・音楽チーム長
▲ ▲チェ・スンヒョン大衆文化部放送・音楽チーム長

 韓国のテレビ界で流れるおびただしい数のオーディション番組のお手本とされる米FOXテレビの『アメリカン・アイドル』は、今年も30%近い視聴率を記録し、米国の大衆の人気を集めている。この番組で特に興味深いのは、約10人が勝ち残った後、毎回冒頭に流れる3分間のミュージックビデオだ。出演者が同じ車で旅行に出掛けたり、洗車をしながら歌ったりする内容で、実はビデオの主役は映像に登場するフォードの乗用車。番組スポンサーのフォードが自社製品を宣伝するために企画した広告の一種だ。

 このように、テレビ番組での間接広告が日常化した米国の放送界だが、『CSI:科学捜査班』『グレイズ・アナトミー』『クローザー』などの人気ドラマでは冒頭から結末まで間接広告は目に付かない。「商品広告への配慮でドラマのストーリーがゆがめられてはならない」という制作陣のこだわりがあるからだ。大手プロダクションのワーナー・ブラザーズのマーケティング担当幹部は「間接広告で少額収入を得るよりも、コンテンツの完成度の方がはるかに重要だ」と語った。

 2010年の放送法改正でテレビ番組の間接広告が一部解禁された後、あらゆる商業的実験に没頭している韓国のドラマ制作陣はそうした分別に留意すべきだ。ますます露骨になる韓国ドラマの間接広告を見るにつけ、今やストーリーは商品を宣伝するための手段に転落した感がある。最近放送が終了したSBSテレビのドラマ『紳士の品格』は粗悪な間接広告に終始する作品だった。中でもチャン・ドンゴンがキム・ハヌルにデザイナーズブランド「ジミー・チュー」の靴をプレゼントする場面は圧巻だった。「ブランド品だから機能性が高いね。130万ウォン(約9万円)の限定版だよ」という友人のせりふでご親切にも値段まで教えてくれたドラマ作家は、チャン・ドンゴンに「ぜいたくそうにではなく、価値ある履き方をしてみなよ」という広告コピーにも似たせりふを与えた。

 このほか、『ユリョン<幽霊>』『キング~Two Hearts』『ゴールデンタイム』など強引な間接広告が批評を浴びたドラマは数多い。最近は、女性歌手グループT-ARAのハム・ウンジョンがドラマ『5本の指』を突然降板したのも間接広告が原因ではないかとの説が流れている。「チーム内のいじめでイメージが低下したウンジョンのせいで間接広告の受注に問題が生じ、制作会社がキャストを無理に変更した」との説だ。間接広告をめぐる制作陣の強迫観念を考えれば、十分にあり得ることだ。

 韓国の放送法では、放送時間の5%、画面全体の25%まで間接広告が認められている。しかし、問題は量ではなく質だ。法律が定める上限を超えていなくても、ドラマのストーリーに無理な負担を与えてまで、間接広告を割り込ませれば、視聴者のいらだちと冷笑を招くだけだ。その上、制作上の雑音まで生じているではないか。韓国ドラマは韓流ブームに乗り、既に世界の人々の関心を集めるコンテンツへと成長して久しい。20年間かけて積み上げた韓国ドラマの国際的地位が、目の前の小さな利益に対する制作陣の欲によって崩壊しても構わないというのか。

チェ・スンヒョン大衆文化部放送・音楽チーム長
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