「お騒がせタレント」に甘い韓国テレビ局

麻薬・賭博・妄言…
視聴者の反応無視、自粛中のタレントにオファー
「実定法違反でなくても騒動後の復帰には注意が必要」

▲キム・グラ
▲ ▲キム・グラ

 「人気司会者キム・グラが13日からケーブルテレビチャンネルで番組に復帰することになった」と3日に報じられたことから、物議を醸した芸能人たちの活動再開基準をめぐり論争が巻き起こっている。世論を無視して自分の都合で復帰時期を決める芸能人も問題だが、「自粛している」という芸能人を競うようにして取り合い、復帰させることに関してファンに一言も説明しないテレビ局にも批判の声が高まっている。

 キム・グラは2002年にインターネット放送の番組で旧日本軍の従軍慰安婦を売春女性に例えたことがあったが、その音声ファイルが今年4月に大手ポータルサイトなどに掲載されて非難の声が上がり、芸能活動を自粛していた。しかし、それから5カ月を経て、トーク番組の司会者として復帰することを決めたものだ。キム・グラは「長い間悩んだ。番組で皆さんにきちんとした姿をお見せするのが最善の方法だと判断した」と語ったが、ネット上などでは「独島(日本名:竹島)問題で日本と激しく対立している時期に従軍慰安婦をさげすむ発言で物議を醸した芸能人が復帰するのは時期尚早ではないか」という声も聞かれる。これより先、同じく人気司会者で脱税の疑いを受けたカン・ホドンは、検察から「公訴権なし」との決定を受けたが、芸能活動再開を発表すると歓迎の声が上がる一方、懸念の声も出た。

 エクスタシーやケタミンなどの麻薬を使用したとして2009年に起訴され、懲役6月、執行猶予1年に社会奉仕命令という有罪判決を受けた俳優チュ・ジフンは現在、SBSのドラマに出演している。10年2月に兵役のため入隊し、昨年11月に除隊したことを考えると、懲罰的な意味での活動休止期間はほとんどなかったことになる。ネットでは「麻薬事件で国民に大きな衝撃を与えた俳優を、老若男女誰もが目にする地上波テレビ局週末ゴールデンタイムのドラマに出演させるのは早すぎる」などの書き込みが見られる。以前にもKBSは飲酒運転と当て逃げをしたとして書類送検された女優キム・ジスを事件直後に時代劇に出演させたり、海外で違法賭博をして在宅起訴されたお笑いタレントKを「活動自粛」からわずか7カ月後にお笑い番組で復帰させたりしている。テレビ局は飲酒運転で摘発された俳優E、家庭内暴力事件に巻き込まれた俳優Pなどに対しても、何の制裁もないまま出演させてきた。

 放送関係者の間では「カン・ホドンやキム・グラの場合、問題が発覚してから間もない時期からテレビ局制作スタッフが出演交渉をしていた」といううわさが広まっている。一部芸能人が番組で「(2人に)早く帰ってきてほしい」というニュアンスの言葉を言ったこともある。ある放送関係者は「地上波テレビ局で社会的に物議を醸した芸能人を出演させるかどうかは出演者規制審査委員会が決めるが、適切に稼働しているかどうか疑わしい」と話す。SBS審議チーム関係者は「社会的に論議を醸したのは事実だが、実定法には違反せず、活動自粛している芸能人を規制対象にするのは難しい。だが、(実定法に違反した)チュ・ジフンの場合は出演させるかどうかで会議を3回も開き、苦慮した」と語った。こうしたことについて「芸能人の社会的影響力が強くなり、ますます複雑化している社会環境では、法の一線を超えていなくても、一般の人々をひどく失望させるような行動をした芸能人に対して局が出演規制議論の幅や視野を広げるべき」との指摘もある。「時の流れとともにいわゆる『お騒がせタレント』のカテゴリーはますます広がっている。法律違反かどうかに関係なく、視聴者の大多数から批判されるような行為をしたら、局も出演するかどうかの決定をより慎重にしならなければならない」(ソウル産業大学ウン・ヘジョン教授)というものだ。

 チャン・ギオ元KBSチーフプロデューサーは「メディア環境が複雑になるにつれ視聴率争いが激化する中、お騒がせタレントの活動復帰も性急になりがちだ。こうしたことは長期的に見れば、一般の人々からそっぽを向かれる結果を招くことになるだろう」と話している。

「お騒がせタレント」に甘い韓国テレビ局

崔秀賢(チェ・スヒョン)記者
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