インタビュー:アン・ネサン「『ハイキック3』は10年やっても楽しくできるチームだった」

インタビュー:アン・ネサン「『ハイキック3』は10年やっても楽しくできるチームだった」

シットコム『ハイキック3~短足の逆襲』(以下『ハイキック3』)で、事業に失敗し、義弟の家に居候しながらもプライドが高い家長を演じたアン・ネサン。コメディーからシリアスまで、情けない男を演じたかと思うと重厚な役、また悪役と硬軟自在に演じる演技派バイプレイヤーだ。スペシャルイベント「KNTV Presents真夏に向かってハイキック!~イケメンたちの逆襲~」に出演のため初来日を果たしたアン・ネサンにインタビューした。

―『ハイキック』シリーズは、コミカルなだけではなく、リアルな人間ドラマを描いています。俳優に要求される幅が広いと思いますがいかがでしたか。

「本当に楽しい作品と思っていて、是非やりたいと思っていました。しかもキム・ビョンウク監督が個人的にも大好きで、一生のうちに必ず作品作りをしたい監督でしたので、自分としては本当に楽しみたい気持ちが大きかったです。楽しみながら撮影が出来る点では、シットコムは本当に楽しく頑張って撮影が出来たと思います」

―『ハイキック3』で思い出のシーンは。

「『太陽を抱く月』と並行して撮影をしていたんですが、『太陽を抱く月』がとても人気になったので、そのパロディーで1人2役のシーンを撮影しましたが、自分的にはそのシーンがとっても面白かったです。苦労したのはお尻にロケットが刺さって飛んでいくシーンです。ワイヤーに吊られての演技で苦労しました。監督が恨めしかったです」

―『ハイキック3』では大所帯を引っ張っていく立場でしたが、そういった面で苦労はありましたか。

「現場では一番年上だったので、おのずと責任感が芽生えてきました。本当にたくさんの人の中で撮影をしていたので、自分がしっかりと重心を取っていかないといけない、と妙な責任感を感じていました。だからといって、自分が刃物を振りかざしたり、脅迫したりできません。なので、これは人間的に接するのがいいのではないか、と思いました。そうすることによって、いい雰囲気ができ、秩序もできると思い、愛情を持って皆さんに接しました。そうしたら皆さんも一生懸命にやってくれました。

徹夜が続くとなると、人はどうしても敏感になってしまいます。神経がピリピリしているので、そのような時に誰かが怒ってしまうと雰囲気が壊れてしまいます。だから自分ももちろん怒りたいこともありましたが、一緒に歩いていかなければと思い、ここでは怒りを抑えようと思い、出来るだけ外に出さないようにしていました。しかし、それ以前にみんなが同じように努力をしてくれていました。おそらく、今後10年同じチームでやっていっても楽しく撮影が出来るのでは、と思うチームでした。

全部の撮影が終わったときに、俳優もスタッフも全員が泣きました。(息子役の)イ・ジョンソクさんもワンワン泣いてすごかったです。忘れられない作品になりました。わたしも数々の作品に出ていますが、これほどまでに撮影が終わってから俳優とスタッフがおえつするくらい泣く現場は初めてだったと思いますし、家族的な雰囲気の中、終わってしまって残念だと一番強く思えたのがこの作品でした」

―キム・ビョンウク監督と仕事をしてみたかったとのことですが、やってみての感想は。また、ほかに仕事をしたい監督はいますか。

「監督との作業は本当に最高でしたし、またもう一度やってみたいと思います。3回ではなく、もう1回です。おそらく非常に厳しいタイトな現場なので3回やったら寿命が縮むと思うので(笑)、あと1回だけやりたいです。永遠にそばにいたいと思っている監督は、イ・チャンドン監督です。現場の見物だけでもさせてほしいし、スタッフとして片隅にいさせてもらうのでもいいと思えるくらい、尊敬している監督です」

― さまざまな役をやられていますが、「本当はこんな役がやりたい、こんな俳優を目指している」という希望はあるのでしょうか。

「以前は王様の役がやりたい、と思っていたら、王様の役が回ってきました(笑)。俳優はどんな役と出会うのが大切かと言うと、『役の中に入り込み、その人物として生きること』だと思います。そうすると俳優として喜びや快感を感じることが出来ます」

― コメディーとシリアス、どちらがやりたい、という方向性はあるのでしょうか。

「流れがあると思っています。コミカルな役を要求されている時は、コミカルな路線(の役)が続いて来ます。しかし、しばらくするとブレーキがかかり、今度は重みのある役が回ってきます。最近は、しばらくコミカルな役が続いていると思っていたら、今度は『メイクイーン』のようなシリアスな役が回ってきて…。そうやってこの時期はこのイメージ、この時期はこのイメージと、変身を繰り返しています。自分の意思とは関係なく、このようにいろいろな演技ができるのは気分がいいし、ラッキーですね」

― 今までで、ターニングポイントとなった役、印象にある役は。

「10年間は演劇を、その後3年間は映画を、その後ドラマをやりました。4年位前に『糟糠の妻クラブ』のムン・ヨンナム作家から連絡があり『君をぜひ使いたい』と言われました。脚本を見ると『どうしてこんなに自分のことをよく知っているんだろう』と思うほど、自分のありのままの姿が描かれていました。すると作家は、『君が思い切り遊んでいる時だけの姿だけを入れたよ。ドラマの中で思い切り遊んでくれ』と言い、その通り思い切り遊んでみました。そうしたらドラマが当たり、皆さんにアピールできたのかギャランティーも上がり(笑)、わたしを知らない人がいないほどになりました。その作品以降、気楽な気持ちで思い切り、後悔がなく出来るようになったそんな作品です。なので自分にとってターニングポイントですね」

― JYJのジェジュンさんなど、後輩の俳優に演技レッスンをされることがあると聞きましたが、どのようなアドバイスをされるのでしょうか。

「何人かに教えたことがあります。教えるというよりも『俳優は嘘をついてはいけない。嘘をつくな』ということを伝えます。嘘をつくと必ず演技に出てしまうと思います。呼吸も表情も変わると思います。なので嘘をつかずに、自分が本当に語りたいことを語ることによって気楽に演じられるし、演じていて気分が良くなる、と言っています。今の若い子の問題は、演技はこれくらいの高みをもたないと、と思い誰かの真似をしがちなので、それではいけない、と教えています。『自分を信じて演じてみなさい』と言います。そうやって演じさせ、また聞くんです。『今のは違うね。何か感じてる?』と。相手もわかってきて、変わっていくことを感じるようです。何度か直してあげて、前と違う演技だった時にまた『気分はどう?』と聞くと『気分がいいです』と言ってくれます。そんな授業をしていて、やって良かったと思いますが…その成果は正直わかりませんが(笑)」

 今では制作サイドからはもちろん、俳優仲間や後輩からの信頼も厚く、ひっぱりだこのアン・ネサンだが、決して順風満帆だったわけではない。若いころは苦労し、悩んだ時期もあったが、それを乗り越えて今の彼がある。話していて、頭が柔らかくていい人、人に信頼感と安心感を与える人だなと感じさせた。

 『ハイキック3』での困ったお父さん、『太陽を抱く月』での威厳あるイ・フォンの父王を同時撮影していたと思うと、その切り替えの見事さ感心するが、新作『メイクイーン』ではまたシリアスな姿を見せてくれるとのことで、楽しみにしたい。

 『ハイキック3~短足の逆襲』は現在KNTVで毎週月~木曜午後11時10分より放送中だ。

インタビュー:アン・ネサン「『ハイキック3』は10年やっても楽しくできるチームだった」

インタビュー:アン・ネサン「『ハイキック3』は10年やっても楽しくできるチームだった」

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東京= 野崎友子通信員
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