色とりどりの花々が庭に咲き誇り、手のひら大のツバキが咲く一本道を歩くと、目の前に突然、西海(黄海)が広がる。白砂の浜には松林が茂り、野生の絶滅危機植物が群生している。世界で最も美しい植物園と呼ばれる「千里浦植物園」だ。
千里浦植物園はアジアで初めて、世界で12番目に世界植物園協会が認定する「世界の美しい植物園」に指定された。また韓国初の民間植物園でもあり、2010年には韓国国内にある植物園で唯一、農漁村公社から「R20(Rural20)観光スポット」の一つに選ばれた。
この植物園の魅力は、森と海がつながっており、さまざまな植物が群生していることだ。白砂の浜辺近くに松林が生い茂っているのは、韓国の海岸なら至る所で見られる風景だ。しかし、約1万3000種余りの植物が群生しているのはここだけだ。
先週末、夏が来る前に植物園を見学しようと出掛けた。ソウルから約2時間、忠清南道泰安郡の万里浦海水浴場と千里浦海水浴場の間に位置する。
入場時には入り口で入場券を購入する必要があるが、近くの飲食店で食事をした場合はレシートを見せれば割引を受けられる。
中に入ると道に矢印で順路が描いてある。その矢印に沿って進むとまず水生植物園にたどり着く。広い湖いっぱいに浮かぶ水生植物や、水面をかき分けながら進むカモ、静かな波にキラキラ光る日差しを見ると、植物園の美しさを実感する。
植物園は季節ごとに異なる美しさを見せる。今の時期ならスイセンやアヤメなどが入場者らの目を楽しませてくれる。湖の横をまっすぐ歩いていくと、この植物園を設立したミン・ビョンガル(米国名:カール・フェリス・ミラー)氏(1921年-2002年)の胸像がある。
ミン・ビョンガル氏は米国ペンシルベニア州出身で、1979年に韓国国籍を取得した。45年に軍人として韓国に来て、そのまま定住した。62年にこの土地を買い取り、70年から本格的に木を育て始めた。そうして誕生したのが現在の千里浦植物園だ。
植物園は合計18のテーマからなる。森の中にある一本道を行くと、針葉樹園や模様園、ウッドランド、ツバキ園などが観覧できる。
ツバキ園では手のひらほどの大きさのツバキが見られる。赤や黄色のツバキが美しく誇らしげに咲き、入場者らはその前で記念写真を撮るなど、楽しく過ごす。ツバキ園の裏には松林に囲まれた海岸沿いのプロムナードがある。
植物園は約2-3時間もあればたっぷり見学できる。だが、園内をもっとゆっくり楽しみたいという人は、生態教育館や韓屋造りのゲストハウスで一泊することもできる。ただし、事前に予約が必要だ。
一晩泊まれば、1万3000種もの草花や木々にまつわる話を解説者からじっくり聞けるほか、1日2回水が引く干潟で、アサリやムール貝、カキなどが生息する様子も見学できる。さらに、植物園の中で一番魅力的といわれる西海岸の美しい夕日を眺めながら、散歩を楽しむこともできる。
6月20日から7月1日まで、忠清南道泰安郡の磨剣浦海水浴場近くでは「2012泰安ユリの花祭り」が「犠牲、それは愛」というテーマで12日間にわたり開催される。詳しくは電話、またはホームページで確認を。