インタビュー:キム・スヒョン「完ぺきな王を演じたかった」

インタビュー:キム・スヒョン「完ぺきな王を演じたかった」

■「原作を見て興奮した」

 大ヒットドラマ『太陽を抱いた月』との縁について、キム・スヒョンが語った言葉だ。事務所で企画案を見てわくわくし、原作が気になり、読むうちにすっかりハマってしまったという。それからは長い間待たなければならなかった。キム・スヒョンが脚本家チン・スワンのところに自ら訪ねて行ったといううわさもあったが、それは事実ではない。だが、待つ気持ちの裏には、自ら訪ねて行くのと同じくらいの情熱が秘められていた。

 「かなり催促したと思います。作品がどのように展開していくのか、より詳しい情報があるのでは、ととても気になりました。シノプシスが出たら読んで、台本ができたら読んで…ますます興奮して、意欲がわいてきました」

 そうして手にした『太陽を抱いた月』出演だが、決してたやすい作品ではなかった。原作小説には既にファンが大勢いるし、主人公のイ・フォンはあまりにも完ぺきな人物だった。イケメンで賢い上に男らしさまで。現実の世界にいるような人物ではなかった。まかり間違えば集中砲火を浴びる可能性もある。だから、出演を前にしていた時期にちょうどヒットしていたドラマ『根の深い木』で主人公の成人後を演じたハン・ソッキュと若いころを演じたソン・ジュンギについてもよく観察した。だが、イ・フォンとは違った。違う人物像が必要で、しかもカリスマ性が求められた。そこで三国志の世界を描いた日本の漫画『蒼天航路』の曹操をイメージし、参考にした。そしてもう一人。若いころのイ・フォンを演じたヨ・ジングだ。

 「しばらくの間、役作りでかなりストレスを感じました。そうしたときに若いころのイ・フォンを演じたヨ・ジング君を見て、僕が見落としていたものに気付いたんです。演技は僕一人でするものではないって。ヨ・ジング君の演技を見てパワーをもらい、役作りをしました」

■実はよく泣く?

 序盤には演技過剰という声もあった。ペ・ヨンジュンから「やり過ぎに見えるかもしれない」と言われたという。褒められるばかりではなかったが、『太陽を抱いた月』旋風の真っただ中で、そうそうたる先輩俳優も顔負けのセクシーな王という人物像を作り上げた。だが、その当本人は「先輩たちの演技に押しつぶされそうになり、挫折した」と言って照れくさそうに笑った。それでも『太陽を抱いた月』はキム・スヒョンにとって生涯忘れられない作品になった。イ・フォンのせりふにあるように「忘れようとしても忘れられない」のだ。

 「最後の撮影のとき、出演者全員が現場にいました。カットの声が掛かり、監督が『僕らのフォン、本当にご苦労さま』とハグしてくださったから、グッと来ました。最後まで泣かないように我慢していましたが、そのときちょうどチョン・ウンピョ先輩と目が合って…ああ…」

 そしてキム・スヒョンはチョン・ウンピョに抱きつき、声を上げて泣いた。その様子は公開され、話題になった。実はキム・スヒョンはよく泣く男だ。2008年に『ジャングル・フィッシュ』という青春ドラマの試写会でも涙をポロポロこぼし、報道陣を慌てさせたことがある。あまりにも演技が下手だという自責の念から出た涙だった。キム・スヒョンは4年前のことを思い出して恥ずかしそうだった。

 「あれから少し変わりました。それまでは恐れも知らずに演じていました。分からなかったんです。ところが、少し分かり始めると急に怖くなって。『ジャングル・フィッシュ』後に慎重になるということを知った気がします」

 「それに、もともと泣くのが好き」とも言った。涙を流すことでしか感じられない感情や気持ちが、キム・スヒョンにとっては大切なのだ。

 「演技に役立つと思っているからか、普段から喜びや悲しみなどの感情を非常に強く極端に感じようと努めています。悲しいときに泣くけど、泣き終わった後に気分がスッキリするのも実は好き。周囲の皆さんは『僕がその感情に耐えきれなくなるのでは』と心配してくださいますが、うれしいときは本当にうれしさを感じたいし、悲しいときは本当に強い痛みを感じたい」

パク・ミエ記者
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