慶尚南道昌原市の会社員キム・ソンジンさん(27)は、自転車で1日のスタートを切る。平日は往復10キロの道のりを自転車で通勤し、週末は教会に通ったり、街で買い物をしたりするときにも利用する。だが、キムさんは自分の自転車を持っていない。
キムさんが利用しているのは昌原市営自転車「ヌビジャ」(NUBIJA=Nearby Useful Bike, Interesting Joyful Attraction)だ。1日平均4回ヌビジャに乗るキムさんの昨年の走行距離は約5000キロ。車を利用した場合、ガソリン代が100万ウォン(約7万3000円)以上かかる距離だ。
キムさんは「ヌビジャで交通費が節約できるのはもちろん、環境保護に役立つため一石二鳥。24時間利用できるし、昌原市内のあちこちに『ヌビジャ・ターミナル』があるから本当に便利」と話す。
世界的に環境規制の声が高まる中、韓国も2020年までに温室効果ガス(二酸化炭素など)の排出量を30%削減することが、09年に決められた。これを受け、各自治体でも率先して二酸化炭素を減らすためさまざまな努力をしている。
特に昌原市は市民と協力し温室効果ガス削減を目指しているケースとして、世界からも注目されている。昌原市営レンタル自転車システム 「ヌビジャ」は08年にスタート、昨年は463万回の利用があった。昌原市民108万人全員が4回以上、このシステムを利用した計算になる。
ヌビジャは年会費2万ウォン(約1500円)の会員制。市内にターミナルが230カ所設置されており、公共自転車4630台が利用できる。ヌビジャの会員は現在約7万人で、昨年末には1日平均利用人数が2万5000人に達したほど利用率が高い。
ヌビジャには衛星利用測位システム(GPS)が搭載されており、移動状況を随時確認できる。さらに、24時間どこでも返却・貸出が可能だ。このため中高生の通学手段としてはもちろん、運転代行業をしているドライバーの移動手段としても注目されている。
また、昨年実施したアンケートでは昌原市民の95.6%が自転車利用運動を前向きに評価していることが分かった。1日の利用回数も2倍以上(10年6118回、11年1万2688回)に増えるなど、ヌビジャの人気はますます高まっている。
国内外からも関心が相次いで寄せられている。今年1月には米国の大学で開催された米国交通運輸研究会議(TRB)年次総会に参加、米国の学界や州政府から絶賛された。韓国国内ではソウル市、釜山市、安山市など10以上の自治体がヌビジャをベンチマーキング(優良な実例に倣って目標を設定する)するため見学に訪れた。
昌原市環境首都課のオ・イルファン課長は「昌原は環境首都宣言をしてから5年4カ月という短期間に、世界も認める環境モデル都市に成長した。これからも市民参加型の環境中心政策を推進していく」と話している。