「仁川のランドマーク」といえば、仁川港(沿岸埠頭)や仁川国際空港を連想することだろう。しかし最近の仁川は、欧州で見かけるような建物や、ユニークなデザインのオブジェが並び、CMやドラマ、ミュージックビデオの撮影地として注目されている。その新たな名所になっているのが仁川松島の「松島国際都市」だ。
ソウルから約1時間かけて到着した松島未来通りには、一般的に利用される2時間探訪コースがあるが、まずは仁川の歴史を知り、松島がどのように構成されているのかを理解するため、「コンパクト・スマート・シティー」を訪れることにした。
セントラルパーク駅の4番出口を出ると目の前にある「コンパクト・スマート・シティー」は、仁川の現在と過去、未来がまとめて展示してある所だ。
「仁川は紀元前18年の歴史に登場した。高句麗時代には買召忽(メソホル)という名称で呼ばれ、朝鮮王朝時代の太宗13年から現在の仁川という地名になった」
1階に設けられた古代と近代の展示館では、仁川という地名の誕生から、最初の灯台、気象台、典圜局(造幣機関)、済物浦港などの模型が本物と同じように再現されている。仁川開港後、韓国に初めて導入された西欧式都市計画として知られる仁川済物浦各国租界計画や、実際に動く模型として作られた唯一の閘門(こうもん)済物浦港も見ることができる。
展示館の2階では、仁川全体を1200分の1に縮小した「仁川模型館」がある。ここで各模型別に作動するボタンを押すと、スクリーンに映像が映し出され、模型に設置された照明が点灯して建物と道路の正確な位置が示される。
仁川文化観光解説者のキム・ミヨンさんは「仁川には開港にまつわる近代史がたくさんあるが、あまりよく知られていない。ここでは仁川の過去と現在、そして将来どのような計画を立てているかがひと目で分かるようになっている」と説明した。
「コンパクト・スマート・シティー」で仁川の歴史に触れた後、すぐ右にある「トライボール」へと移動した。UFOのような形をしたこの建物は、仁川市が2009年に開催した世界都市祝典を記念して建てた建物だ。底面が狭く深い三つのボールは、それぞれ空、海、地面を象徴している。
トライボールを見学した後、未来通りを歩いて「松島セントラル公園」へと向かった。セントラル公園は、晩秋を彩るススキと潮の香りで情緒あふれる風景だった。水の都市ヴェネチアの人工水路を参考にしたというこの公園には、韓国で初めて海水を引いて作った人工湖がある。
セントラル公園の湖のほとりを歩いていると、欧州の雰囲気が漂う「カーネルウォーク」が見えてきた。この通りには中央水路に沿って、春・夏・秋・冬をテーマにした欧州風の建物が建ち並んでいる。
カーネルウォークをゆっくりと見学しながら未来の道を歩いていると、いつの間にか夕方になってしまった。西海(黄海)に沈む夕日を見るため、急いで「仁川大橋展望台」に向かった。日没の後、しばらくすると仁川大橋と高層ビルの照明が点灯し始めた。柔らかいタングステンランプの照明が輝く松島の夜景は、漢江とはまた違う魅力があった。
夜景を見ているうちに冷え切った体を温めるため、そして松島の旅の締めくくりに、15年の伝統を持つチョンゴル(鍋)料理店でプデチゲ(ソーセージやハム、肉を入れた辛い鍋料理)を食べることにした。
ボリュームのあるプデチゲは、大勢で食べても十分おなかが一杯になりそうな量だった。辛くてコクのあるスープを口に運ぶたび、冷え切った体がホッとして溶けるような感じがした。