先日放送された地上波テレビ局ドラマのワンシーン。ヒロインの看護助手が、献血する人の腕にサッと注射針を刺す。針を抜くと一筋の血がたらりと流れ出る。ヒロインはガーゼを取り出し、注射跡をギュッと押さえ付け、何事もなかったかのように一般ごみ用のごみ箱に捨てた。
一見、何も問題はなさそうだが、実はこのシーンは廃棄物管理法違反に当たる。廃棄物管理法第13条第2項などには「血のついたガーゼなど感染のおそれがある医療用廃棄物は必ず専用の箱に捨て、関連法規に基づき10日間以内に焼却しなければならない」となっている。違反すれば過料1000万ウォン(約69万円)が科せられる。地上波局のドラマは、このような違法行為を何の問題意識もなく放送していると批判されている。
今夏終了したSBSドラマ『新妓生伝』では、ヒロインである19歳の「妓生」(キーセン=韓国の芸妓〈げいぎ〉)が初めて客を取る際、客が超豪華なマンションを買い与えるシーンが登場した。ネットの掲示板には「クラブ女性従業員との2次会(売春)と何が違うのか」という非難が殺到した。このドラマには、現行法上、認められていない私刑(リンチ)である「す巻き」のシーンも登場した。
昨年放送されたMBCドラマ『パスタ~恋が出来るまで~』はせっかちなレストラン・シェフ(イ・ソンギュン)と、ドジな調理師の卵(コン・ヒョジン)のロマンスを描いた作品だが、男女雇用平等法に違反するシーンがたびたびあった。シェフはすぐに「この調理場に女なんていらない」「お前はもうクビだ」と言い、最大3000万ウォン(約200万円)の罰金となる違反をした。SBSドラマ『妻の誘惑』には内縁の夫の酒に睡眠薬を入れるシーン、他人のセミヌード写真を第三者の携帯電話に送信するシーンなどがあった。
問題になるたびに、テレビ局の制作サイドは「時間的な余裕がなくて、配慮すべきだと気付かなかった」「ドラマだから問題ない」などとはぐらかしてきた。京畿大学言論メディア学科のソン・ジョンギル教授は「韓国の視聴者は『ドラマは生活の延長線上にある』と考える傾向が非常に大きいため、ややもするとドラマが違法を当然視し、助長する世相をあおる可能性もある」として関係当局の徹底した対応を求めている。