歌手ALI(27)=本名:チョ・ヨンジン=。名前を聞いたことがないという方は、今や「芸能界の大御所」となったヒップホップ・デュオLeessangの2005年のヒット曲『オレが笑ったんじゃない』でフィーチャリングしている女性歌手の声を思い出すといい。ALIはハスキー&ジャジーな声で、ハードなヒップホップのリズムに甘くまろやかなテイストを加えた。「ALI」という名前は、モハメド・アリの熱狂的なファンであるLeessangがつけてくれたもの。Leessangは初め、自分たちにとってもう一人のあこがれであるマイク・タイソンにちなみ「タイスン」という名前にしようとしたが「ひどすぎる」と言われ変えたそうだ。
ALIは現在、KBS第2で毎週土曜日に放送されているバラエティー番組『不朽の名曲2-伝説を歌う』の出演者で最も光輝いている。ホン・ギョンミン、ホ・ガクら歌手7人が伝説の名曲をアレンジし競い合うこの番組で、ALIは初出演から6週間で3回も優勝している。
11日、ソウル・光化門で会ったALIは「ステージで歌える場がほしいといつも思っていました。でも『不朽の名曲』で、その『飢え』が少しずつ満たされています。実は、あのように大勢のお客さんの前でソロで歌うのは初めてなんです。とても緊張して、お客さんの顔もほとんど見えません」と語った。
それでも、ALIはいつもワクワクするライブを見せてくれる。特に先月、チョー・ヨンピルの『キリマンジャロのヒョウ』をアルゼンチン・タンゴ風にアレンジした歌はその後1週間、大きな話題を呼んだ。「ナレーションやパフォーマンスのため舞台俳優さんの所に行き、アドバイスをもらいました。『シカゴ』『キャッツ』といったあこがれのミュージカルのようにしようと思ったんです。『不朽の名曲』に出演するようになってから体重が4キロも減りました。オーディションを受けるたびに『やせろ』と言われ続けたので、この番組にはいろいろとお世話になっています」
小学校のとき母に連れられてパンソリ(唱劇とも言われる韓国の伝統芸能)を習い、音楽に携わるようになった。元記者で、現在はインターネット・メディア会社の社長を務める父と一緒に、何度も公演に足を運んだ。中学のときはサムルノリ(農楽)団、高校のときは交響楽団で活動した。21歳のときロックグループ「Schizo」のコーラスを務めたのがきっかけで、大衆音楽の世界へ。その後もしばらくゲストボーカルやジャズクラブのシンガーをしていたが「一度もやるせないと思ったことはありませんでした」という。
「飢えを感じているから花開く音楽もあります。あまりにも人気が高いとすぐ冷めてしまうじゃないですか。ダンスも演技もしてみたい。浮気をするとかではなく、歌とそれに込められた感情をさらに豊かに表現できるような気がして」
「声を自己評価すると?」と聞くと「黒人のソウル・ミュージックに例える方が多いですが、よく聞くと韓国人の恨(ハン=やるせない思い)が込められたパンソリに近いです」と答えた。「今はバラード、ジャズ、タンゴなど、いろいろな歌で魅力をアピールしたいと思います。でも、そのうち韓国人の情緒を込めたバラードで直球勝負したい」と抱負を語った。
ALIは12日に放送される『不朽の名曲』で、今は亡きキム・ヒョンシクの『路地』をアレンジして歌う。「スイング・ジャズ風でダンスもします。街灯の下でセクシーなALIのステージをお見せしますよ」(笑)