有名な仏国寺、秋の月がかかる普門湖。「フェンスがない博物館」と言われるほど文化遺産が随所に残る「千年古都」慶州。今年の春に訪れた慶州が忘れられず、再びその地を訪ねることにした。
今回訪れたのは慶州・普門観光団地にある新羅ミレニアムテーマパークだ。高ぶる気持ちを抑えながら中に入ると、盾と剣を手にした威厳漂う十二支神像が見えてきた。新羅王朝時代のキム・ユシン将軍墓にあった十二支神をかたどった像だというが、そこから感じられる「気」は威圧的だった。キム・ユシン将軍は新羅時代に起こった数多くの戦争で先頭に立った名将だ。ドラマ『善徳女王』を見た人ならご存じだろう。この新羅ミレニアムパークの宮殿・伝統家屋・港・武術錬成場・市場などのオープンセットや、洞窟・滝・松林・竹林で『善徳女王』の撮影が行われたということで、好奇心がさらに膨らむ。
松並木の小道をしばらく歩くと、目の前にとてつもなく大きな「聖徳大王神鐘」がつり下げられた場所に出た。実際のサイズの約4.5倍というこの模型は、新羅ミレニアムパークのシンボルだという。しかし、中国人の私にとってはもっとうれしい物があった。それは、唐の玄宗皇帝が寵愛(ちょうあい)した楊貴妃のために造ったという中国・長安(現在の西安)の池「華清池」だ。ここには新羅が栄えていた8世紀の世界主要都市における代表的な建造物が集まっており、華清池もその一つだ。ここにある華清池は中国の文化財専門家が実物の75%に縮小し復元したものだという。華清池を見ると、子どものころに西安で見た華清池を思い出し、思わず口元が緩んだ。
松並木に沿ってゆっくり歩いていくと、工芸体験村にたどり着いた。新羅の文化を感じるのに一番いい方法は、当地の伝統文化を体験することではないだろうか。工房ごとに金属・染色・ガラス・木工・陶芸などさまざまな工芸品作りを体験できるスペースがある。
次に足を伸ばしたのは、新羅時代の貴族の町を再現した「千年古都」。ここは『三国史記』の記録に基づいて再現された建物が並び、当時の文化や制度がそのまま伝わってくる。当時の身分制度「骨品制」では、父母が王族なら「聖骨」、親の一方が王族なら「真骨」と呼ばれたという。ほかに六頭品から一頭品までの身分の区分があり、最高の貴族である聖骨の家屋は、ほかの身分の家屋に比べはるかに大きく立派だった。身分に応じて階段の数など建物の形が少しずつ違うなど、当時の身分制度の厳格さをうかがい知ることができる。
そして、いよいよ楽しみにしていたドラマ『善徳女王』の撮影地へと足を運んだ。ロケ地となった場所はもともと1000年の歴史を持つ貴族の町だった所に、一部施設を補って造成されたという。5520平方メートルの敷地に宮殿10棟と花郎(貴族の子弟集団)の錬成場9棟が追加で建てられた。屋内スタジオだけでなく、新羅ミレニアムパークのあちこちでもロケが行われたそうで、韓流ドラマファンの1人として、撮影地を巡ることができて感慨深かった。また、ロケ地には善徳女王の人形も展示されており、「女王」と一緒に記念撮影も楽しむことができた。これから先、アルバムをめくるたびにどんな気分になるのか…と思うとワクワクする。
最後に、新羅ミレニアムパークで見逃せないのが、伝統的な韓屋(韓国家屋)式ホテル「羅宮」だ。客室は全16室、廊下とつながっている単独客室構造で、韓国を代表する大工の優れた技術が現れている。全客室に温泉施設があり、旅で疲れた体を温泉でゆっくりと癒やすことができる。
文=リー・ウーシャ