「みんな僕のことを『君は本当に運がいい』って言うけど、そういう時はほろ苦い思いもあります。実はいろいろな出来事があって僕もすごくつらかったし、その分、それを乗り越えようと本当に一生懸命頑張ってきました。とにかく、これまでのよくない出来事は僕自身が強くなるきっかけになったと思います」(笑)
俳優クォン・サンウは映画界やテレビ界でよく「ピンチを乗り越えた男」と言われる。さまざまなスキャンダルや交通事故など、世の人々のうわさになる大きな事件を経験しながらも「起き上がりこぼし」のように再び立ち上がってきたことから、そう呼ばれているのだ。
もちろん、本人としてはそう言われるのがうれしくない時もあるが、数回にわたる事件・事故を乗り越えて得た評価をいつも謙虚に受け止めようと心掛けている。
昨年出演した『戦火の中へ』以来、1年半ぶりの映画『痛み』(クァク・キョンテク監督)にも、そうした気持ちがそのまま投影されている。
痛みを全く感じられない無痛症を患う男ナムスン(クォン・サンウ)が、血友病で小さなけがにも敏感な女ドンヒョン(チョン・リョウォン)と出会ったことから始まる愛の物語。クォン・サンウは痛みを感じない体を生かし、殴られることでカネを稼ぐナムスンを演じている。
このため、映画の冒頭から誰かの代わりに殴られたり、街で袋だたきされるなど、ストーリーの全般でさまざまな暴力を振るわれる。
「殴られるシーンを通じ、観客の皆さんが痛快な気持ちを感じてくだされば。僕のことが嫌いな方なら、メチャクチャに殴られるところを見て少しはスッキリするかもしれません。個人的には、これまでの事件に対する謝罪の意味も込めました」
このように殴られるシーンがメーンということで、撮影中はけがが絶えなかった。3階建ての建物からジャンプし、足首の靱帯(じんたい)を痛めるなどして、このところは4日に1回、骨と靭帯の間を埋める注射を打ちながら、プロモーションのスケジュールをこなしているという。
かねてから代役なしで体当たりのアクションに挑戦したいと思っていたが、何よりも久しぶりの恋愛映画ということで、その意欲は並々ならなかった。
「息子(ルッキ君)が大きくなり、『自分の父親は各ジャンルに1本ずつ代表作を持つ俳優だと胸に刻んでくれれば』との思いを抱くようになりました。これまでアクションやコメディーなどをしてきましたが、恋愛映画は代表作がないと思ったので、余計に気持ちが傾きました」