俳優イ・ジェフン(27)は、主演映画『凍てつく夜に / Bleak Night』が観客動員数1万人を超え、2万人を突破したときも、自分がこのようにスポットライトを浴びることになろうとは思わなかった。独立系映画界での「主演ヒット」という実績を引っさげ、制作費100億ウォン(約7億4600万円)台の大作映画『高地戦』で主演級の役を演じることになり、一気に注目された。
『高地戦』の試写会が行われる前に会ったイ・ジェフンは、新人らしく控えめな若者だった。思ったよりも体が小さくきゃしゃだ。『高地戦』で演じているシン・イルヨン役が持つカリスマ性は、普段の姿からは見受けられなかった。「本当はこんなにやせてはいないんですが…」と言いながら頭をかいた。「『高地戦』は死ぬほど苦労して(笑)撮影しましたが、その後すぐに『凍てつく夜に』が公開になったんです。だからけっこうスケジュールがきつくて大変でした。それに、最近少し体調も悪かったんです。次にお会いするときはもっと丈夫な体でお会いできるようにしなくては…」
小柄だが『高地戦』でスクリーンいっぱいに放つ存在感は大きい。イ・ジェフン演じるシン・イルヨンは「ワニ中隊」の隊長で、主演のシン・ハギュンやコ・スとほぼ同じ比重を占める役だ。弱冠二十歳にして年上の部下たちに戦闘意欲を吹き込み、最後の高地戦まで彼らを率いる。女性客向けのファンサービス(?)なのか、思わず目がくぎ付けになる「脱衣シーン」もかなりある。「不十分な点はたくさんありますが、自分が持っているすべてをお見せするつもりで演じました。3-4カ月待って手に入れた役なんです。新人としては待つのはつらかったけれども、最終的にシン・イルヨン役を手に入れるまで、ハラハラしながら役作りをしてきました。そうしたプロセスがないまま決まっていたら、逆にこの役を演じるのは難しかったと思います」。『映画は映画だ』『義兄弟~SECRET REUNION』などをヒットさせ、男優を見る目の確かさが証明されているチャン・フン監督は、最初に映画の話が出てからイ・ジェフンを抜てきするまでの3-4カ月間、会議やオーディションを重ね最終的な決断を下した。それだけに、イ・ジェフンについて「これほどのルックスで演技もできる若手俳優を探すのは難しかった」と自信を見せた。
イ・ジェフンは「僕のことを知っている方は、軽くてふざけていた僕がこれほどおとなしくなるとは思わなかったそうです(笑)。本当に暴れん坊でひどい子どもでした。大人たちの前で歌やダンスを見せるのが好きでした。小中高生時代も『引っ込む』ことを知らない目立ちたがりな性格で、いつも真っ先に踊ったり歌ったりする子どもでした。そうした性格を変えられず、とうとうここまで来てしまいましたね」と話す。
生命工学を専攻していたが、最初は「だめだったら元の生活に戻ろう」という軽い気持ちで演技を始めた。だが、結局は演技がとても楽しくて、やめることができなくなった。「家ではとても反対されましたが、僕の演技を見て喜んでくれる人がいて、僕自身、喜びを感じました。今もファンレターや励ましのメッセージをもらうと、とても不思議な気がします」。『高地戦』の撮影が終わった今では、「自分の年相応の役を演じてみたい」というのが素朴な願いだ。1984年生まれの満27歳だが、『凍てつく夜に』では高校生、『高地戦』では20歳の役を演じている。「母も姉も童顔です。
だからなのか、いつも実年齢より若い役を演じてきましたが、今は30歳くらいの深みがある姿もお見せしたいですね」