「100人以上のスタッフが取り組んだ映画…とにかくヒットしてもらわなければ」
映画『クイック』主演のイ・ミンギはそう語った。制作費およそ100億ウォン(7億5000万円)の超大作の主人公というだけあり、覚悟のほどが違っていた。
「撮影の前は分からなかった。大作映画の主演が何を意味するのか。『主演俳優が弱い』『イ・ミンギが主演なのに、100億ウォンも投資するのか』などと言われて気がついた。『ああ、ポスターの一番最初に僕の名前が載るんだ』って。だからすごいというのではない。それだけ責任重大ということ」
しかし、ヒットするかどうか心配したことは1度もなかった。「ヒットすればいい」ではなく「とにかくヒットしなければならない」という覚悟で撮影したのだから、結果も当然いいはず、と言ってイ・ミンギは豪快に笑った。
実際、イ・ミンギが大作映画に挑戦するのはこれが2度目。2009年の作品『TSUNAMI-ツナミ-』が生んだ観客動員数1000万人の神話が、『クイック』のイ・ミンギを誕生させたといえるだろう。
愛する人のため海に飛び込み、自らを犠牲にする水難救助隊。『TSUNAMI』でイ・ミンギの相手役だったカン・イェウォンが、『クイック』でも相手役に起用された。また、キム・イングォンが警察官役で、二人を追い掛ける。『TSUNAMI』に出演した若い俳優たちを再結成させたような構成だ。それもそのはず、『クイック』の制作を手掛けるのは『TSUNAMI』のユン・ジェギュ監督だ。
演出はチョ・ボムグ監督。チョ監督ともともと親しかったとはいえ、モデル出身のイ・ミンギが、映画というジャンルへと第一歩を踏み出した作品はチョ監督の『堤防伝説』だった。
イ・ミンギは出演作を選ぶ際、「人(共演者)」をまず最初に見るというが、『クイック』では性格、能力、そして相性までよい俳優たちが集まったのだから、考える必要もなかったという。
また、シナリオを渡されたとき「これを映画化するのか」「本当にこのように撮影するのか」と何度も確認したほど、アニメのようなアクションがメーンになっている。同作でイ・ミンギは、最高級のオートバイに乗って、都心を時速200キロで疾走するバイク便ライダーを演じる。
元々オートバイが好きだというイ・ミンギ。「何度も危険な思いをしたが、楽しかった」と撮影当時のことを回想した。
同作は爆弾テロ事件に巻き込まれるバイク便ライダーを描いたアクション映画だ。主人公はとにかくオートバイを上手に乗りこなす俳優でなければならなかった。イ・ミンギは同作の主人公に起用されたことについて、『TSUNAMI』での縁に恵まれ、運がよかったと謙遜(けんそん)するが、制作スタッフたちの言葉は違っていた。オートバイを運転しながら演技ができる俳優に、イ・ミンギ以外見当たらないと判断したという。
制作を担当したユン・ジェギュン監督は「米国の『スピード』やフランスの『タクシー』を超えるような映画を作りたかった」と話す。俳優デビューから7年。ドラマではデビュー作で新人賞に輝き、映画出演5作目にして「観客動員1000万人の俳優」というタイトルを手に入れたイ・ミンギの疾走はこれからも続くのだろうか。それが、21日に公開される『クイック』が気になる理由かもしれない。