「キム・ギドク色」が抜けた弟子、チョン・ジェホン監督(下)

 チョン監督は昨秋、「師」から『豊山犬』の脚本を受け取った。「キム・ギドク・フィルムの従来の映画ではなく、自分のカラーを出した映画が撮れるのか心配した」と話す。結論は「喜怒哀楽がすべて盛り込まれた面白い映画を作らなければ」というものだった。「だから、『豊山犬』にはアクション、ラブストーリー、コメディーなどさまざまな要素を入れた」と説明する。試写会を見た評論家らが「キム・ギドクの弟子が作ったが、キム・ギドクの映画ではなかった」と評したところを見ると、チョン監督の狙いはある程度成功しているようだ。

 男性主人公のプンサン役を演じたユン・ゲサンは、映画の中でセリフを一言も発していないが、鋭い目つきとアクションで深い印象を残した。チョン監督は「皆さん、ユン・ゲサンさんのことを『アイドルグループg.o.d出身でソフトなイメージを持つ俳優』とばかり思っているが、僕はもっといろいろなことができる俳優だと思っていた。作家主義(映画制作の中心は映画監督という名の作家だという考え方)の映画だけを撮る監督だと見られている僕とよく似た境遇に置かれている気がして、なおのこと気になっていた」と話した。ユン・ゲサンは、ほかのスタッフ全員同様、ノーギャラで出演した。チョン監督が映画『悲夢』の演出チーム一員として参加し知り合った日本の人気俳優オダギリジョーもエキストラとして参加している。

 チョン監督は、過去5年間の映画界生活について「最初の短編(『魚』)でベネチア映画祭、長編映画(『美しい』)でベルリン映画祭に行ったが、誰も僕を探していなかった」と話す。また、「芸術映画を撮る若い監督だというレッテルをはられたから、ほかの映画を撮るチャンスも全くなかった。この3年間はとてもつらくて、映画をやめたいと思ったが、そうした時もキム・ギドク監督は最後まで僕を放さないでいてくださった」と「師」への深い思いを語った。

 最後に、「今後撮りたい映画は?」と聞いてみた。すると、チョン監督は「作家主義とか何とかではなく、僕が撮りたい映画、今でなければ撮れない映画が作りたい。アクション映画のように年を取ると作るのが難しい、スピーディーな映画が作りたい」と教えてくれた。

卞熙媛(ピョン・ヒウォン)記者
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