マナガツオの英語名は「バターフィッシュ」。なぜそのような名前が付いているかは、今の季節にマナガツオを食べてみれば分かる。滑らかで柔らかい白身はバターのようなコクがあっておいしい。
今が旬のマナガツオ。一般的に魚は産卵期を前に生殖器が肥大し、脂肪を蓄える。マナガツオの産卵期は5~8月ごろ。産卵を目前に控えたこの時期になると、味は最高に達する。中でも全羅南道新安の沖合いで捕れるマナガツオが一番おいしいとされる。新安郡智島邑の松島水協共販場は、この近海で捕れたマナガツオが集まる所だ。共販場の仲介人たちは「ほかの地域で捕れたマナガツオも、智島で捕れたと言うと高く売れる」と説明する。
一般的に白身の魚にはコラーゲンが多く含まれており、コリコリとした歯ごたえがある。韓国人はこの食感を好み、刺身にはヒラメなど、白身の魚が好まれる。その代わり、脂肪を含む味の成分は赤身の魚よりも少ない。舌で魚の深い味わいを楽しむ日本人がマグロなど赤身の魚を好むのはそのためだ。
マナガツオは白身の魚でありながら、赤身魚のように脂肪を多く含んでいるのが特徴だ。100グラム当たりの脂肪含有量は5.0グラムで、ヒラメ(1.7グラム)よりはるかに多いのはもちろん、脂肪を多く含む魚の代表格であるサワラ(6.1グラム)やブリ(5.8グラム)に近い数値だ。脂肪分が多いにもかかわらず、赤身の魚のような生臭さはなく、白身特有のさっぱりとした味わいだ。最近は、体型はグラマーであっても、顔は清純な女性のことを「ベーグル(ベビーフェース+グラマー)」と呼ぶそうだが、コクがありながらさっぱりしているマナガツオこそ「魚界のベーグル」といえるだろう。
マナガツオは形も独特だ。背中の真ん中がとがっている上に、幅が狭く、平べったくて、全体的に大きなひし形をしている。全長は最大60センチまで大きくなる。全体的に金色なのが特徴だ。どのように調理してもおいしいが、特に刺身や煮魚がおいしい。小さなマナガツオを骨ごとぶつ切りにして、韓国みそと一緒にゴマの葉に包んで食べるとその独特の甘みを堪能することができ、ジャガイモと一緒に甘辛く煮込めば柔らかくてコクのある肉質を十分に味わうことができる。
6月1日に松島水協共販場を訪れると、全国からマナガツオを買いに集まった商人たちでにぎわっていた。しかし、期待したほどマナガツオの数は多くなかった。松島水協共販場の仲介人でユダル水産のオーナー、チュ・ヨンジャさんは「最近、マナガツオは貴重になった。地球温暖化の影響で水温が高くなっており、漁獲量が減っている」と説明する。そのため値段も高い。共販場では1箱に入る量によって「20匹入り」「30匹入り」「40匹入り」と区分して販売している。共販場で6月1日現在のマナガツオの競売価格は20匹入り1箱が20万-23万ウォン(約1万4800-1万7100円)、30匹が25万-28万ウォン(約1万8600-2万800円)、40匹が15万-16万ウォン(約1万1200-1万1900円)程度。小売価格はこれに10%ほど上乗せされた値段になる。1箱20匹入りのマナガツオは1匹の値段が1万ウォン(約740円)以上にもなり、1箱40匹入りのものでも1匹3000ウォン(約220円)以上の値段になる。智島水協のナム・ヒヨン課長は「漁獲量が減っている一方で、マナガツオの味が全国的に有名になったことで、需要も過去より増えて、値段も例年より高くなっている。しかし、一度食べれば絶対に後悔しない味」と説明した。