3Dアニメ映画から歴史体験まで楽しめる「百済文化団地」

 慶州や扶余には中学・高校の修学旅行で行った記憶がある。修学旅行で古都を訪れるのは、歴史的な文化財が多いからだろう。

 今振り返ってみると、武寧王陵や仏国寺といった文化財も記憶に残っているが、文化財を見て回るためにバスで移動したことを鮮明に覚えている。あちこちに文化財が点在しているためだ。


 しかし、忠清南道の扶余には、文化財を1カ所に集めた「百済文化団地」がある。ここでは、当時の建築法を基に昔の城や生活の様子が再現されている。

 先日、百済文化団地を訪れた。中央にあるサビ(サ=さんずいに四、ビ=さんずいに比)宮の軒や木の柱はハスの花と竜の模様が刻まれ、百済の美を感じた。

 中に入ると、ソウルにある景福宮勤政殿のような広い空間に3階建ての宮殿が見えた。


 その光景から、百済時代の臣下たちが左右に300人ずつひれ伏し、その様子を上から見下ろす百済の王が思い浮かんだ。

 宮殿を見学していると、案内放送が流れてきた。「ミュージカル『薯童の愛』がサビ宮天政殿で上演されます。無料公演ですので、どうぞお集まりください」。王宮から出演者たちが姿を見せると、観客が1人、2人と集まってきた。


 このミュージカルは、百済の薯童(第30代王・武王)が新羅の善花姫に恋心を抱き、最後には王と王妃として結ばれるというラブストーリーだ。上演中、客席に駆け寄るなどの迫力ある演技に観客は驚き、拍手で応えていた。

 約30分間の公演で、出演者たちは汗びっしょりになっていた。公演後、観客は出演者たちと記念写真を撮り、感動の余韻をカメラに収めていた。

 次に、サビ宮左側の塀の向こうにある木造の塔へと向かった。ここは、百済時代の寺院と五重塔がある陵寺だ。この塔は高さ38メートルで、発掘された遺跡の原型をそのまま再現したものだ。


 石塔の武骨さがない木製の塔で、流線型の自然な赴きと温かさが感じられる。木をたくみに挟み込んで合わせ、継ぎ目にすき間がない点がこの塔の特徴で、長い年月が過ぎても変形しない。

 塔の頂上を見ると、丸い物が柱を包んでいるように見える。その部分には金メッキが施されており、太陽の日差しが反射しキラキラ光っていた。

 次に、文化団地内で学習体験ができる生活文化村を訪れた。ここは百済時代の村を再現した場所で、貴族・軍官・平民・庶民という階層ごとに居住施設や生活の様子が再現されている。


 ここで会ったチョン・テギョンさん(28)=大田市=は「昔の遺物や遺跡が集まっていて、1カ所で見られるのがいい。特に、生活文化村では百済の人々の生活や服装までが再現されており、百済の時代を直接目にしているような気がする」と話す。

 百済歴史文化館では3Dアニメーション『サビの花』が常時上映されている。中に入ると、黒いメガネをかけた子供たちが前に手を伸ばしながら、3Dのアニメ映像を楽しんでいた。

 このアニメは百済時代を舞台に、サビ国とこれを攻撃する黒い軍隊との闘いを3D映像で描いたものだ。

 百済の歴史や文化を肌で感じることができた一方で、百済の王陵を見学せずに帰るのは心残りなので、武寧王陵や古墳がある公州へと向かった。

 百済文化団地から1時間ほどのところにある武寧王陵は、百済第25代王・武寧王と王妃の墓。三国時代の王陵のうち、唯一埋葬されている人物が特定されている。


 王陵の内部はアーチ形の造りになっており、レンガがぎっしりと積まれている。ハスの花模様が刻まれたレンガは、王陵の荘厳さと百済の人々の真心が込められているような印象を受けた。

 現在は王陵保存のため、入場者の出入りが禁じられているのが残念だ。しかし、武寧王陵模型館で発掘当時の姿がそのまま再現されており、その様子を見学することができる。

 武寧王陵を見学する前に、公州市内で昼食を取った。最も「百済らしい」メニューを探していたところ「ハスの葉御膳(ごぜん)」が目に止まった。


 百済後期の都である扶余は、当時東アジア最高水準の仏教文化が花開いた場所だ。ここで昔から食されてきた料理の一つが「ハスの葉飯」だ。

 ハスの葉飯を注文すると、ハスの葉に包まれたご飯と10種類以上のおかずがテーブルいっぱいに並べられた。

 ゆらゆらと湯気が立ち上るハスの葉を開いてみると、松の実・クリ・ナツメ・カボチャなど8種類の具材が詰まった雑穀ご飯が入っている。緑のハスの葉に色とりどりの雑穀ご飯が彩られ、いっそう食欲をそそる。そして、一口食べると、ハスの葉のほのかな香りが口いっぱいに広がった。

百済文化団地:忠清南道扶余郡窺岩面百済門路368-11
武寧王陵:忠清南道公州市熊津洞57
百済の家(ハスの葉飯の店):忠清南道扶余郡扶余邑クァンブルギ119-3

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