インタビュー:『悪人』李相日監督に聞く(下)

―久石譲氏が音楽を担当した。(久石譲氏は宮崎駿アニメの『千と千尋の神隠し』、パク・クァンヒョン監督の『トンマッコルへようこそ』などの音楽を担当した巨匠)

 「学生時代から憧れていた方で、いつか一緒に仕事をしたいと思っていた。メジャーな会社と仕事するこの機会にお願いしてみようと考えた。エネルギーあふれる方だ。巨匠なのに、他と違うこと、新しいことをしなければならないという危機感を持っている」

―憧れの巨匠と一緒に仕事をして良かったか。

 「(韓国語で)大変ですよ。(再び日本語で)言いたいことを言うのが大変だった。音楽作業室で一週間、幽霊のように無言で立っていた。それでも男には言わなければならない時がある。久石監督の音楽には強い感情が含まれているので、音楽が俳優たちよりも前面に出て感情表現をしないよう、調整が必要だった」

―デビュー作『青-chong-』以降は、映画に在日韓国人としてのアイデンティティーがあまり出ていない。

 「朝鮮学校を出て20代前半で社会に足を踏み入れたが(自分と日本社会の間の)認識の温度差はあまりに大きかった。同年代の日本の若者たちは、在日韓国人の存在も知らなければ、関心もない。その時に感じた違和感を映画にした。今後、日本社会で在日韓国人として描くべきテーマが出てくれば、また作ることがあるのではないか」

―次回作を決定する際に念頭に置いていることは。

 「映画を一つ撮影してみると、関心事も変わり、表現したいことも変化する。最も怖いのは自己模倣だ」

―好きな韓国の監督は。

―「ポン・ジュノ監督の作品、その中でも『殺人の追憶』と『母なる証明』が特に好きだ。『悪人』の封切りを前にマーティング広報担当のスタッフと一緒に『母なる証明』を見た。『悪人』は暗く現実的なので、観客の反応が不安だったが、韓国でも『母なる証明』のような暗い映画がヒットしたのだから、われわれも成功させようという意味で見た」

―韓国俳優と仕事をするのはどうか。

 「死ぬ前にソン・ガンボさんが出演する映画を撮ってみたい。これは必ずタイトルに大きく書いてアピールしてほしい」

李相日監督

 在日韓国人3世として1974年に日本で生まれる。大学卒業後、日本映画学校(現・日本映画大学)で映画を勉強する。卒業作品の『青-chong-』が2000年ピア・フィルム・フェスティバルでグランプリなど4部門で受賞したのを機に、映画界にデビュー。04年、村上龍の同名小説を原作とした映画『69 sixty nine』を制作し、評論家の注目を集めた。06年には『フラガール』で日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞し、第79回米アカデミー賞外国語映画賞の出品作に選ばれた。

卞熙媛(ピョン・ヒウォン)記者
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