月庵斎・慶州博物館を巡る

慶州旅行記(2)

 韓国に来てここ数年のことだ。折を見て地方を旅するようになったのは。「ある国について知りたいならその歴史を知り、歴史について知りたいならいにしえの都を見よ」という言葉がある。それで旅先に決めたのが慶州だ。慶州は新羅(356-935年)の首都で、韓国の古代文明の発祥地として広く知られている。

 柔らかな風、新鮮な空気、それに暖かい日差し…。慶州の春は美しかった。数時間の道のりを経て到着した慶州での初日は、伝統的な韓国式建築の家に泊まることにした。


 玄関を開き、敷居をまたいだ瞬間から、古色蒼然(そうぜん)たるたたずまいに圧倒された。「タイムマシンに乗って昔に戻ったのではないか」という錯覚に陥ったほどだ。

 玄関の上にある木製の看板には「月庵斎」と書かれている。数百年の歴史を誇るこの家は、今では当時の書斎を残すだけだ。東側の塀の片隅にさまざまな花が植えられており、庭に彩りを加えていた。

 月庵斎の裏手には山があり、前には川が流れていて、「背山臨水」という風水の概念にかなっている。人為的でない自然の風景や純朴ないにしえの姿そのままの月庵斎。人間世界の外にある「武陵桃源」、つまり桃源郷とはこういう所のことではないかと思った。

 冬が終わり、春がやって来てから間もないためか、まだ肌寒さが残っている。月庵斎の部屋は全て韓国の伝統的な床暖房「オンドル」になっていて、一夜を過ごす旅人のために寒さを防ぎ、暖を取るのにピッタリだった。その晩、私は暖かい部屋の床に韓国伝統の花模様が刺しゅうされている布団を掛け、ゆったりと眠りに就いた。

 翌朝、朝日がそっと部屋の中に入ってきて、顔をくすぐった。窓を開けると、新鮮な風が部屋を吹き抜ける。ほのかな花の香りと土の香りと共に。部屋の中を片付け、今日1日のスケジュールの開始だ。

 最初に行ったのは国立慶州博物館。ここは新羅時代の首都・慶州の文化遺産でもある。好奇心いっぱいに博物館の庭に入ると、韓国の代表的な釣り鐘「聖徳大王神鐘」が目に入る。その荘厳たる姿に身も心も引き締まる。


 次に向かったのは古墳館。ここは、慶州市内の大きな古墳から発掘された金冠・装飾物・ベルト・首飾りなど金で作られたきらびやかな遺物が展示されていた。陳列されている遺物を見れば、この上なく華やかだった当時の王宮の様子をうかがうことができる。

 そして、次に訪れたのが雁鴨池館。ここは雁鴨池で発掘された遺物約3万点のうち、最も代表的な遺物が展示されている。ほかの展示館が王族の墓から出土された遺物を展示しているのに対し、ここの遺物は全てが生活用品で、新羅時代の民衆の生活がありのままに伝わってくる。

 最後に行ったのは本館だ。ここには、数多くの陶器や色とりどりの工芸品が展示されている。遺物を見れば、新羅時代の優れた芸術性をこの目で確かめることができる。このほか、博物館では慶州地方の寺や王宮の遺跡から運ばれた石で作った遺物が展示されている。石製の遺物はほとんどが仏教関連の彫刻だ。もともと仏教や華やかな王宮文化に関心を持っていたため、国立慶州博物館は目の保養になる貴重な機会だった。

文=リ・ウーシャ

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