数々の映画やドラマに出演し「ヒットメーカー」として知られているスター女優のAさん。その美ぼうと演技力でファンは多いが、実はファッション業界ではモデルとしてあまり歓迎されていない。知名度は抜群なのに、CM出演もそれほど多くない。先日、Aさんの写真を撮影をしたある広報業界関係者は「ブランド物の服なのに、彼女が着るとなぜか平凡な服にしか見えない。本当に着映えしないタイプのようだ」と語った。
業界関係者らによると、Aさんのように芸能人としてのネームバリューと「ファッション・パワー」は比例するとは限らないという。だから、芸能人による「スター・マーケティング」は必ずしも成否を保証するものではなく、一種の「賭け」ということになる。
女優のBさんは先日、海外でファッション写真を撮影した。現代ドラマでも時代劇でも主演を務め人気があるBさんだが、この写真集はほとんど注目されていない。撮影に同行したある関係者は「どうしてこんなにも『絵』にならないのかと思うほど。衣装の協賛をしてくれたブランドが損害賠償を請求してくるのではないかと心配になった」と語った。 1990年代にトップ女優と言われたCさんも同様だ。当時最高の人気を博した作品で主演したが、「ファッション・スター」としては注目されていない。
逆に、知名度は低いが、ファッション・パワーが高い芸能人もいる。女優Dさんは映画やドラマではほとんどが脇役で、出演作もあまり人気がない。しかし、ファッション業界のイベントの出演オファー対象タレント・ランキングでは常に上位にいる。あるカジュアル・ブランドは、CMモデルをトップクラスの男性韓流スターから、彼より人気も知名度も低いアイドルグループのメンバーに変えたところ、売り上げが好転したそうだ。
なぜこうしたことが起こるのだろうか。スターのイメージは、そのスターが演じた役に重なるというのが理由の一つだろう。
広告業界の関係者は「経済的に苦しい環境にも屈せず生きていくという役をよく演じる俳優は、その役のイメージのためファッション関係ではうまくいかないことが多い。逆に、悪役でも洗練されていて、華やかな姿で登場すれば、ファッション・パワーが急激に上がることもある」と話す。前述の女優はAさん、Bさん、Cさんとも洗練された都会の女性ではなく、苦しい家庭環境から人生大逆転で成功するという、漫画「キャンディ・キャンディ」のヒロイン、キャンディのような役を主に演じてきた。
ファッションを見る人々の目がレベルアップしたのも一因だ。ファッション業界のある関係者は「最近は空港での写真やブログの写真などで、一般の人々がスターの普段のファッションセンスを目にする機会が多い。今は、スポンサーの協賛やスタイリストの助けがなくても、スターたちが自らコーディネートしたファッションを一般の人が見て、そのファッション・パワーを評価する時代」と話している。