キム・ドヒョンを演じる際、チャン・ヒョクの意見はどれほど反映されたのだろうか。『推奴』のクァク・ジョンファン・プロデューサーがチャン・ヒョクのキャラクターの分析に舌を巻いたという裏話もある。
「俳優の美徳はポジションを守る淡白さだと思う。俳優は与えられたキャラクターを正確に演じなければならない。その過程でキャラクターを立体的に動かすためには、俳優と監督のコミュニケーションが重要になる。僕が分析したキャラクターと監督が描こうとしているキャラクターの差を認識しながら、一つのキャラクターを作り上げていく。プロデューサーにはかなり迷惑をかけたような気がする(笑)」
チャン・ヒョクは『マイダス』でキム・ドヒョンと対立するユ・インへ役にキム・ヒエを強く推したという。チャン・ヒョクは『マイダス』に出演することになったきっかけの一つにキム・ヒエを挙げた。
「ユ・インへという人物は単純な悪女ではなく、演じるのが難しいキャラクター。まさにキム・ヒエ先輩にぴったりだと思った。だから(カン・シンヒョ)プロデューサーに頼んだ。キム・ヒエ先輩と一緒にやってみたいと。それができなければキム・ドヒョン役は断ると言った。ちょうどプロデューサーも僕と同じ考えだった」
チャン・ヒョクは今年下半期に放送予定の『根の深い木』への出演を控えている。同作品は、訓民正音(ハングルについて解説した書物)が公布される前の7日間、集賢殿で繰り広げられたミステリーを描いた時代劇で、チャン・ヒョクはカン・チェユンという反抗児的な役を演じる。一見『推奴』で演じたデギルと似ている印象がある。『推奴』で演技大賞を手にしたチャン・ヒョクにとって、デギル役は「強み」であると同時に「宿題」ともいえる。
「デギルとカン・チェユンをチャン・ヒョクという俳優が演じれば、どちらもチャン・ヒョクとして認識されるのは当然だと思う。アル・パチーノという俳優を見ていると、彼がどんな役を演じてもアル・パチーノが見える。俳優固有の性格や色が完全に変わるということはない。『推奴』のイ・デギルと『根の深い木』のカン・チェユンは、目的としているものが多少違う。前半ではチャン・ヒョクに見えるかもしれないが、ドラマが展開し、視聴者がドラマにのめり込んで共感したとき、その人物が新たな命を得るのだと思う」
『推奴』のイ・デギルと『マイダス』のキム・ドヒョン、そして『根の深い木』のカン・チェユンまで。チャン・ヒョクが最近の作品で演じた役はどれも荒々しい男のイメージが強い。しかし、映画『英語完全征服』やドラマ『明朗少女成功記』など、コミカルなキャラクターを演じた経験も多い。
「演じたいキャラクターというのは特に決めていない。時期的に今、自分が演じたいと思っているキャラクターを演じる。演じてみたいと思っているキャラクターは数え切れない。『うれしい我らの若き日』の純粋な男、『ホワイト・バッジ』『ゲームの法則』のチンピラなどは特に演じてみたい。僕はまだ30代半ばの若い俳優。
まだまだ挑戦できる余地はある」