■7:30pm
『ジキル&ハイド』は、人間の善と悪を分離する実験を行い、神を冒涜(ぼうとく)したと批判されたジキル博士の物語だ。「チョ・ジキル」は「暗闇の中、道に迷ったあなた/夜明けは遠く/無限の夜」と歌い、物語の中へ観客を引き込んで行く。そこには、ベストコンディションでなくても観客を引き込む力がある。言葉の調子やリズム、体の動きで歌唱力という弱点をカバーした。
このミュージカルで最も有名な曲「This Is the Moment(時が来た)」が流れてくると、客席の興奮は頂点に達した。「今この瞬間、魔法のように/わたしを縛ってきた鎖を外し、投げ捨てる/今、わたしにあるのは確信だけ/あとに残るは勝利のみ…」。豊かな声量と肺活量が必要で、短いが感情を集中させなければならない曲だ。「チョ・ジキル」は自身の体に薬を注射する前に歌うこの歌で、音楽的かつ感性豊かな能力を爆発させた。そして、冷酷な殺人鬼ハイドに変身した。
第2幕でチョ・スンウがジキルとハイドの間を行き来しながら歌う歌「Confrontation(対決)」、切実な思いが込められた「The Way Back(昔々)」も喝采(かっさい)と歓声を浴びた。ジキルと三角関係になるエマとルーシーはこの日、チョ・ジョンウンとキム・ソニョンが演じた。昨年11月30日の初演時と同じだ。2人の女優もドラマチックな感情と優れた歌唱力で「チョ・ジキル」の最終公演に花を添えた。
■10:10 pm
160分にわたる公演が終わり、カーテンコールが。スタンディング・オベーションは、アンサンブルの出演者たちが出てくる時から始まっていた。この瞬間をひたすら待っていたかのようだ。チョ・スンウはマイクを手にした。「この作品には深い思いがたくさんありますし、すべてを注ぎ込んだ様な気がします。除隊する時は体重が65キロでしたが、今は59キロです。皆さんのご声援があったので、休むことなく駆け抜けることができました。でも、あまりにも何回も見てくださったので、お金がなくなってしまったのでは? 2回だけご覧ください…」。
演劇界では、チョ・スンウのミュージカル次回作として、11月に上演される『ゾロ』を期待している。チョ・スンウは「緊張するとハチに手を次々と刺されるような感覚がします。『ジキル&ハイド』がまさにそれ。舞台メークを落とす気力もなくなりますが、次の日また、この公演ができるのは、作品が力を与えてくれるから」と言っていた。だから、気になる。チョ・スンウはこの日、楽屋でどんな気持ちでメークを落とし、「ジキル」を消し去ったのか。
▲『ジキル&ハイド』は8月末まで、ホン・グァンホ、キム・ジュンヒョン、キム・ウヒョンのトリプルキャストでジキルを演じ、上演される。
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