人気スター「新人時代の話しないで」


 最近、映画・ドラマ・CMなど縦横無尽に活躍している女優のAさん。先日、Aさんがある食事会で顔を曇らせる出来事があった。十数年前、当時人気だった男性歌手の脇でモデルとしてCM出演した彼女の「過去」が話に出たのだ。当時のAさんは真っ先に撮影現場に来て、人気タレントが姿を現すのを待っていなければならない無名の新人だった。

 この話をしたのは、当時撮影現場にいた関係者だ。彼は「『あの時のことはつい昨日のことのように目に焼き付いているが、今やスターになったのだから素晴らしい』と言ったところ、Aさんの表情が固まっているのに気が付き、『しまった』と思った。雰囲気を盛り上げようとして話したのに、するんじゃなかった」と言った。

 どんなトップスターにも無名時代はある。だが、彼らにとって、つらかった当時のことは美しい思い出というよりも思い出したくない過去であることが多い。だから、芸能界やファッション業界には「スターたちの無名時代のことを知っていても、知らない振りをしろ」という不文律がある。「やたらに親しげな、よく知っているそぶりをしようと昔の話を持ち出したら、そのスターには二度と会えないと思え」ということだ。

 トップモデルのBさんは無名時代、所属事務所の代表が有名デザイナーに「泣きついて」ファッションショーでデビューを果たした。当時の所属事務所代表は、同じ事務所の女優をファッションショーに出させてほしいというデザイナーに、「Bもバーター(抱き合わせ出演)で出してほしい」と頼んだ。デザイナーは乗り気でなかったが、これを拒否すれば出したい女優も出てくれそうにないので、仕方なくBさんも一緒にモデルとして使った。ところが、このショーをきっかけにBさんはファッション界で注目されるようになった。当時、Bさんをショーに出したデザイナーは「デビュー直後にはほとんど毎日ショップに顔を出していたが、本格的にドラマや映画に進出、人気が出てからは連絡もほとんどない」と言った。「デビュー当時をよく知っているわたしを嫌がる気持ちは分かるが、正直言って寂しい」ということだ。

 女性トップスターのCさんは、無名時代に「ファッション誌のグラビアに出させてほしい」と、母親と一緒にファッション業界関係者を訪ねて来たことがある。この関係者は「Cさんの今しか知らない人たちは、彼女が母親の手を握り、僕のところに来たなんて想像もできないだろう。先日もプライベートな集まりでそれとなく話を切り出したが、知らんぷりされたのでそれ以上は話さなかった」と言った。

 そうした一方で、人気女優のDさんは、インタビューなどで自分を芸能界にデビューさせてくれたファッション界関係者に必ず言及する「律義な」タイプだ。彼女を街でスカウトした業界関係者は「わたしのことを話すからではなく、感謝することを知っているというのが素晴らしい」と言った。

チェ・ミンギ記者
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