ハンセン病:「歌王」チョー・ヨンピルが小鹿島を訪問(上)

患者と手を取り抱き合う
1年前の約束守る
「私たちのために来てくれるなんて…島に71年間住んでいるがこんな感動は初めて」
「体調が悪くても、目が見えなくても今日だけは踊りたい」 


 「夢は空で眠り…」。15日午後3時、全羅南道高興郡にある国立小鹿島病院のウチョン福祉館。韓国で「歌王」と呼ばれる歌手チョー・ヨンピルがハンセン病患者約300人の前で『友よ』を歌いながら、突然客席に下りた。すると「オッパ(お兄さん=あこがれの男性に親しみを込めて言う呼び方)」「チョー・ヨンピル先生」という歓声が上がった。チョー・ヨンピルはハンセン病患者たちの手や顔をなで、抱きしめた。聴衆は、そんなチョー・ヨンピルに向かって「去年の約束を守ってくれてありがとう」「来年も是非来てください」と叫んだ。チョー・ヨンピルは客席を二回りし、全員とスキンシップを交わした後、再びステージに戻り、歌い続けた。「友よ、夢の中で会おう 懐かしき友よ」



 チョー・ヨンピルが小鹿島で公演を行うのはこれが2度目だ。彼は昨年5月5日、イギリス・フィルハーモニー・オーケストラと共にこの島を訪れ、自身の歌を2曲披露した。「前回、こちらの方々が別れを惜しむ姿を見て、次は私だけのステージをお見せしなければと決心しました。今回は皆さんにとって友、弟、兄のような存在になりたいと思いました」

 午後2時、1曲目の『おかっぱ頭』が流れると、客席はすぐに盛り上がった。チョー・ヨンピルが「リクエスト曲を受け付けますので、思う存分、踊りながらお楽しみください」と声を掛けると、客席からは「『窓の外の女』をお願いします」「『釜山港へ帰れ』をお願いします」「『虚空』をお願いします」というリクエストが寄せられた。「大変なことになったな。全部歌うんですか?」とわざと困ったふりをして笑うと、『虚空』を歌い始めた。客席で一緒に口ずさむ人々の目には光る物があった。

 重く悲しい雰囲気に沈みそうになると、チョー・ヨンピルはムードをサッと切り替えた。「去年来た時は『釜山港へ帰れ』を歌わなかったので、皆さんからたくさんの抗議がありました」と言い「つばき咲く、春なのに…」と歌い出した。そして「皆さん、ぜひ前に出て踊ってください。さあ」と促した。『虚空』を聞き、感傷に浸っていた観客たちは、大きく力強い拍手に背中を押され、20人ほどがステージの前に出て、踊り始めた。指や足の一部を失い、目も見えないというキム・ヨンドクさん(82)は車いすに座ったまま、肩を揺らして踊った。「71年間この病院にいます。目は見えなくても踊らずにはいられませんでした。ステージの前で体を動かしたかったんです」

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