10年以上同じ値段、変わらぬ名店

 10年もたてば山や川も変わるというが、一番変わるのは物価かもしれない。2001年に1600ウォンだったタクシーの基本料金は、今では2400ウォンに上昇。480ウォンだったインスタントラーメンは、現在750ウォンだ。公式の集計表を見なくても、この10年間で物価が大幅に上がったというのは誰もが感じることだろう。

 しかしこのような厳しい世の中にもかかわらず、昔のままの値段を今も守り続けている食堂がある。安いものは美味しくないと思いがちだが、常連客たちが熱いエールを送り続けているのにはそれなりの理由がある。味も値段もありがたい「薄利多売」のお店を紹介しよう。

12年前のメニューそのまま、大田農民スンデ

 スンデ(豚の腸詰)クッパは3000ウォン(約220円)。肉やスンデがたっぷり盛られた「スンデ盛り合わせ」(大)は1万ウォン(約740円)だ。この店のスンデは、普通のスンデに比べ野菜をふんだんに使っているため、草の香りがする。


 スープの中にご飯と薬味が入ったクッパは、ちょうど良い塩加減でコクがあり、いくら食べても飽きない。クッパには一口大に切ったスンデが四つほど入っている。少し物足りない感じもするが「できるだけ安くしてたくさんの人に食べてもらうため」というのが社長のポリシーだ。

 農民スンデは12年間、同じ値段を維持し続けている。メニューも昔のままだ。今後も当分の間、値上げする予定はないという。店内は古びた雰囲気だが、客足が途絶えることはない。テーブルの回転の早さは目を見張るほど。1時間ほど店内の様子をうかがったところ、1テーブル当たり4~5組の客が食事をしていくペースだった。大田駅からタクシーに乗れば、基本料金で店に着く。24時間営業、年中無休。

※スンデの盛り合わせ(小)5000ウォン(約370円)、(中)7000ウォン(約520円)。大田広域市中区文昌洞9-10。

慶星大学の名物、釜山飲食男女

 社長自ら開発したというハンバーグが自慢の店。近くにある大学の学生たちにも大人気だ。常連の学生たちが自発的にプロモーションビデオを作るほど、社長の人柄も店も人気がある。

 10年以上値上げをせず、量も質も満足だ。薄く焼いた丸いハンバーグには、豚肉や大き目に切ったニンジン、玉ねぎなど、野菜がたっぷり入っている。もともとは社長のイさんが息子のために作ったものだが、いつの間にか店のメニューの一つになったという。マヨネーズとケチャップをミックスさせたソースをつけて食べると、家で母親が作ってくれた昔懐かしい味がする。酢豚も人気メニューの一つ。営業時間は午後3時から午前2時まで。

※ハンバーグ3000ウォン、酢豚7000ウォンなど。慶星大学正門の右にあるイムシル・チーズピザの角を入ったところ。

2枚を一度に、蚕室トンカツ

 入り口に「運転手食堂(トラックやタクシードライバー向けの食堂)」と大きく書かれているが、一般の客も多い。客層は中学生、高校生から中年男性まで幅広い。

 トンカツは1人前3000ウォンだが、かなりボリュームのある量だ。大きなトンカツ1枚に小さなトンカツが一つおまけでついてくるため、見ただけでお腹が一杯になるほどだ。注文してから料理が出てくるまでに2~3分しかかからない。10年前と変わらぬ値段で、味は昔懐かしい「韓国風トンカツ(薄いトンカツにソースがたっぷりかかっている)」に似ている。優しい味わいでしつこくないため、ペロリと平らげてしまう。肉は柔らかく、適度な歯ごたえもある。

 白菜と大根のキムチ、ご飯はセルフサービスでおかわり自由。ただし、おかわりしたご飯を残した場合は1000ウォン(約74円)がプラスされる。24時間営業のため、夜はトンカツをつまみに酒を飲む客も多い。


※ウェルビーングトンカツ、ソンジヘジャンクク(牛の血を固めて入れたスープ)3000ウォン。ソウル松坡区石村洞2-17。

つまみの心配なし、仙遊島2000両ハウス

 2000両ハウスという店名はおおげさではない。約30種類のメニューの半分は2000ウォン(約150円)。そのほかのメニューも3000~4000ウォン(約300円)だ。1997年にオープンして以来、全く値上げしていない。かなりボリュームのある量で有名なこの店は、卵焼きに14個もの卵を使う。最近の卵の値段を考えると、赤字覚悟だ。「うちの店では絶対にお酒を2本以上飲まなければダメ」とオーナーは話す。つまみで出る赤字をお酒で補充する、というのがこの店の「生き残り作戦」というわけだ。

 お酒はセルフサービス。この店では料理の値段が安いにもかかわらず、会計のときに酒の本数をごまかす客がいるという。そのため、店の入り口には「酒の本数をごまかす人はお断り」と書かれた張り紙が張られている。主な顧客層は20代の大学生たちだ。

 昔の価格を維持し続けている良心的な経営方針は、オーナー夫婦のポリシーだ。開店は午後4時、閉店は午前2時だ。日曜日と祭日は午後6時から午前1時まで営業している。

※ソウル地下鉄9号線仙遊島駅2番出口前

チョン・ジイン記者 , 写真=イ・ギョンミン記者
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