15日午後、各メディアにはA4用紙3枚分のプレスリリースが届いた。送信者は「国民の弟」と呼ばれるほど人気の歌手でタレント、イ・スンギの所属事務所フック・エンターテインメントだった。「イ・スンギは来年の入隊前まで『1泊2日』にとどまることにした」。芸能関連のインターネット・メディアが先週末から一斉に「イ・スンギはバラエティー番組『ハッピーサンデー』(KBS第2)の人気コーナー『1泊2日』を降板することになった」と報道したのを正式に否定する内容だった。
「1泊2日」は視聴率20%を超える人気コーナーだ。イ・スンギは2007年11月の同コーナースタート時から出演、「うっかりスンギ」と親しみを込めて呼ばれ、人気者になった。イ・スンギはこのコーナーを足掛かりに、ドラマやバラエティー番組にまで活動領域を広げ、CM出演でもトップクラスのギャラをもらうようになった。一般視聴者としては、こうした状況でのイ・スンギ降板説も残留発表も寝耳に水だった。これまでKBSとイ・スンギの間に一体何があったのだろうか。
KBSとイ・スンギ所属事務所の話を総合すると、イ・スンギ側にはひとまず、「1泊2日」を降板したいという意向があったようだ。ある放送関係者は16日、「イ・スンギはもう1年くらい前から日本に進出するため『1泊2日』を降板したいという意向をKBSに伝えていた」と話す。所属事務所側がプレスリリースで「イ・スンギのスケジュールと今後の活動計画について、『1泊2日』制作側と話し合いを続けてきた」と述べたのも、こうした状況を裏付けている。別の関係者は「KBSも当初はイ・スンギ側の降板を了解する意向だったと聞いている」と語った。
そうした状況がこじれ始めたのは、「1泊2日」レギュラーのキムCとMCモンが昨年5月と 9月に相次ぎ降板したためだ。「KBS側から『新メンバーが入って来るまで待ってほしい』と言われ、イ・スンギ側も断れず待つことにした」という。所属事務所のプレスリリースにも「新メンバーが入り、番組が安定すれば、(イ・スンギと『1泊2日』の)別れの時期について調整することで制作者側と合意していた」という趣旨の文章がある。
ところが、新メンバー加入が延び延びになったまま年が明けると、放送関係者の間では「イ・スンギ側は『日本進出をこれ以上引き延ばすことはできない』とし、KBSに最終的に降板の意向を告げた」といううわさが流れた。そして、先週末からはインターネット上の各メディアが「イ・スンギ降板決定、制作者側困惑・遺憾を表明」といった記事を一斉に出した。
このため、ネット上は大騒ぎになった。同番組公式ページの視聴者掲示板には「(イ・スンギが)降板したら『1泊2日』はなくせ」「イ・スンギがいない『1泊2日』は見ない」など降板に反対する書き込みが殺到。「イ・スンギは強欲」「もう『おなかいっぱい』で満足ということか」といった「アンチ」の書き込みもあった。純粋で堅実なイメージだったイ・スンギとしては、こうした騒ぎになること自体、かなりの負担を感じるのも当然だ。結果的に言えば、ファンが「『1泊2日』のイ・スンギ」を死守したことになる。
イ・スンギは、金銭的にも名誉面でも現状を上回る日本進出が難しくなった一方で、KBSは内心「やった!」と叫んでいる。双方の損得勘定がこれほど大きく開いてしまったためか、テレビ関係者の間では「イ・スンギ降板説をリークし、騒動に火を付けたのはテレビ局側では?」という話までささやかれている。「イ・スンギ側が降板の意向を曲げなかったので、ファンの反対意見を担ぎ出そうと、メディアを利用した気配がある」というのだ。
KBS側は強く否定してるが、イ・スンギ側の心中は穏やかでない。所属事務所はプレスリリースで「イ・スンギのためにこれ以上ハードなスケジュールは難しいと判断」「イ・スンギのさらなる成長と将来について(『1泊2日』側と)共に悩んできた。イ・スンギは今、新たな選択と挑戦をする時期ということで(双方が)十分に共感していた」と言及するなど、これまでKBSと水面下で交わしたやり取りまですべて明らかにしている。それだけKBSとの話し合いで精神的な負担も大きかったということだろう。