俳優ソ・ドヨンはケーブルテレビOCNの金曜ドラマ『夜叉』で悪役を演じる。しかし、どこか満たされていないような表情だ。ソ・ドヨンは「(行動を)理解できるような悪ではなく、悪そのものを演じてみたい」という。
ソ・ドヨンが『夜叉』で演じるのは、ペクロク(チョ・ドンヒョク)の弟ペッキョル。野望に満ちた人物で、愛するジョンヨン(チョン・ヘビン)の気持ちが兄に傾いていることを知ると、権力を手に入れるため漢陽に向かう。
そして運命はさらにからまっていく。左議政(朝鮮時代に政治や外交を行った官職)カン・チスン(ソン・ビョンホ)の娘と愛のない結婚をし、義父を守るため兄と戦うことになる。さらに、カン・チスンの妾となったジョンヨンと危険な恋に落ちていく。
「悪役を演じることになったけれど、少し優しすぎるような気がする。一抹の同情も感じられないような悪役を演じてみたい。ペッキョルはドラマの設定上、憐れみを感じさせる人物なので。映画『悪魔を見た』でチェ・ミンシク先輩が演じたような、悪そのものといえるような役を演じてみたい」
ペッキョルは同作品の中で心理的な迷いを見せる。やむを得ない状況の中で兄と戦うことになり、お互いの首に刀を当てるものの、その裏にはもろい心がのぞく。
「第4話あたりで、兄と薬菓(小麦粉とハチミツをこねて油で焼いた菓子)をめぐるエピソードが登場する。左議政のむこになったのだから、貧しさとは無縁の生活になったのに、薬菓を山ほど積み上げて食べても、昔食べたような味ではない。貧しかった子ども時代、兄が一生懸命働いて買ってくれた薬菓の味とは違う、と泣くシーンがあるが、まさにペッキョルの心理をよく表わしている」
ペッキョル役で満足できなかった部分がもう一つある。体自慢(?)ができなかったということだ。2カ月間、鶏のササミだけを食べながら体を鍛え上げたが、同ドラマでは役柄上、この体を公開することができないからだ。
「本当に一生懸命運動した。アクションシーンの練習を6時間、そのほかウエートトレーニングをすると、1日がすぐに終わってしまった。今回のドラマでは短期間で体作りをしたため、回を追うごとに引き締まっていく体を見せようと思っていたけれど、ペッキョルは後に武芸の達人になってしまうので、体を見せる必要がなくなってしまった。ペクロクとは違い、上流階級の武士なので(笑)。残念。後でいい作品があったら、鍛えた体をお見せしたい」
ソ・ドヨンは来年30歳になる。俳優としてどんな気分だろうか。
「20代はこれで終わりだという気持ちは強いけれど、まだ自分が30代になるという実感はない。20代に立てた目標はすべて実現できた。それは、経済的独立。両親からの完全な独立だ。これからまた新しい目標を立てる予定。30代の目標は、俳優として認められ、成長すること。
みんなに『あの俳優が出るなら絶対に見たい』と言われるような俳優になりたい」